「アクティブファンド特集」を見る
ブルーボンド:アジア開発銀行が海洋環境などの改善にブルーボンドを発行
アジア開発銀行(ADB)は2021年9月10日、アジア・太平洋地域の海洋関連プロジェクトへの融資を目的とした、オーストラリア(豪)ドルおよびニュージーランド(NZ)ドル建てのデュアル・トランシェ・ブルーボンドを発行しました(図表1参照)。ADBとして初のブルーボンド発行となりました。
ADBが発行したブルーボンドはオーストラリア(豪)ドル建とニュージーランド(NZ)ドル建の2本建てで構成され、それぞれ別の保険会社が購入しました。
ブルーボンドの発行例はグリーンボンドに比べ小さいが、関心は高まりつつある
グリーンボンドは地球温暖化対策など幅広いプロジェクトへ取り組むための資金調達として発行される債券です。一方、ブルーボンドは海洋保護や持続可能な漁業、廃棄物処理など、水が関係するプロジェクトに資金使途を限った債券というのが基本的なイメージです。グリーンボンドもブルーボンドも環境・社会・ガバナンス(ESG)債のサブカテゴリーの位置づけです。
アジア開発銀行(ADB)としては、今回のブルーボンドが初めての案件となりますが、ブルーボンドは3年ほど前に発行されています(図表2参照)。
最初のブルーボンド発行と言われるのはセーシェル政府で、ブルーボンド国債を発行しました。世界銀行などが発行を支援しています。
セーシェル政府によると、ブルーボンドで調達した資金は海洋保護や漁業マネジメントなどに使用するとしています。アフリカの島嶼国(当初国)であるセーシェルは海に囲まれており、海洋資源の保護や、持続的な海洋ビジネスは重要なプロジェクトです。このように、ブルーボンドは海洋の汚染から養殖など持続的な海洋ビジネスを対象としています。海岸線の長さ等から東アジアやインド太平洋地域にもメリットが大きいとの指摘もあります。
グリーンボンド同様に、ブルーボンド発行の枠組みがあります。今回のADBでは(拡大された)グリーン&ブルーボンド・フレームワークの下で当該債券が発行されています。このフレームワークには発行原則、対象プロジェクト、評価プロセスとグリーンもしくはブルーボンドの資金調達、資金の配分、モニタリングとレポートに該当する基準、コンプライアンス、外部評価とセカンドオピニオンの7項目が定められています。グリーンもブルーも大枠は似ていますが、対象プロジェクトが海洋関係などとするのがブルーボンドというイメージです。
ADBは19年に「海洋保全と持続可能なブルー経済のための行動計画」(行動計画)を策定し、24年までに50億ドルの投資を目指しています。今回のADBのブルーボンドは行動計画の一環と位置づけられています。
なお、ADBの行動計画は、国際連合が15年に採択した17の目標(及び169のターゲット)で構成される持続可能な開発目標(SDGs)の14番目の「海の豊かさを守る」項目の達成を支持するものです。今後の動向が注目されます。
ブルーボンドの今後を占う上で課題を見ると、グリーンボンド同様に、ブルーボンドが対象とするプロジェクトなどの定義についてはこれからの展開を見守る必要がありそうです。また、海洋プロジェクト固有の問題も指摘されています。例えば、プラスチックごみの問題を考えてみても、それが別の国から流れてくる場合もあり他国の協力が求められます。河川であっても日本の場合は概ね国内問題ですが、複数の国にまたがる場合、解決はやはり協力が必要です。もっとも、これらの問題は昔から存在していた国家間の問題であって、ブルーボンド自体の問題ではないでしょう。
ブルーボンドがきっかけで、解決が困難であった問題が一歩でも解消に向かうことを期待します。
※記載された銘柄はあくまでも参考として紹介したものであり、その銘柄・企業の売買を推奨するものではありません。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『グリーンの次にブルーボンド』を参照)。
(2021年9月16日)
梅澤 利文
ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト
日本経済の行方、米国株式市場、新NISA、オルタナティブ投資…
圧倒的知識で各専門家が解説!カメハメハ倶楽部の資産運用セミナー
カメハメハ倶楽部セミナー・イベント
【11/19開催】相続税申告後、
約1割の人が「税務調査」を経験?!
調査の実態と“申告漏れ”を
指摘されないためのポイント
【11/19開催】スモールビジネスの
オーナー経営者・リモートワーカー・
フリーランス向け「海外移住+海外法人」の
活用でできる「最強の節税術」
【11/23開催】ABBA案件の
成功体験から投資戦略も解説
世界の有名アーティスト
「音楽著作権」へのパッション投資とは
【11/24開催】事業譲渡「失敗」の法則
―M&A仲介会社に任せてはいけない理由
【11/28開催】地主の方必見!
相続税の「払い過ぎ」を
回避する不動産の評価術