【問題:日本が固定相場制に戻れない理由を述べよ】優秀な学生と超優秀な学生、それぞれの回答例 (※写真はイメージです/PIXTA)

日本は高度成長期まで「1ドル=360円」の固定相場制でした。現在採用されている変動相場制は、日々の為替レートのチェックが大変で、値動きによってはビジネスにも大きく影響するため、担当者は日々大変な思いをしているでしょう。ならば、計算が楽だった固定相場に戻せばいいかというと、そうはうまく運ばないのです。理由を見ていきましょう。経済評論家の塚崎公義氏が解説します。

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固定相場制は、いろいろと便利だったのに…

為替レートは毎日・毎時・毎分・毎秒、変動します。高度成長期までは、法律で「1ドル=360円」と決まっていたため、貿易関連の業務に従事していた人も、為替レートのチェックは必要ありませんでした。その時代と比較すれば、なんとも面倒なことです。

 

面倒なだけではありません。貿易関連の仕事に就いている彼らは、為替レートの変動を見るたび、気が気ではないでしょう。輸出契約時には利益が出るはずだったのに、いざ輸出代金を受け取る段になると円高ドル安となってしまい、損失を被ってしまう…といったことが起きかねないからです。

 

とはいえ、輸出企業等については、そうした事態を避ける手段として「為替予約」等々がありますので、実害はそれほど大きくないかもしれませんが、そうはいっても、「さらに大きな為替変動」が生じた場合、影響は深刻です。

 

たとえば、大幅な円高になって日本製品の輸出ができなくなった場合には、輸出企業が国内に建てた工場が無駄になってしまい、倒産するかもしれませんし、従業員たちが解雇されてしまうかもしれません。

 

そういった事態を避けるためにも、戦後のような固定相場制を採用するべきだ…という考え方もあるでしょう。しかし、それは無理なのです。

 

さてここで、大学のテストで「なぜ無理なのか」と出題した場合、優秀な学生と超優秀な学生が、それぞれどう答えるか、予想される答案用紙を見てみましょう。

優秀な学生は「インフレ率の格差」に着目する

【問】

なぜかつてのような固定相場制に戻すことができないのか。その理由を述べよ。


【解答】

固定相場制が成立するためには、両国の物価水準が等しい必要がある。しかし、現在の物価水準が等しくなるように固定相場を定めても、両国のインフレ率が異なると、遠からず両国の物価水準が異なることとなり、固定相場制が維持できなくなるのである。

 

為替レートの基本は、そもそも日本と米国の物価が等しくなることです。そうでなければ、物価の高いほうの国民が自国通貨を相手国通貨に替えて相手国で買い物をするようになってしまい、その結果、銀行には相手国通貨の買い注文が殺到して固定相場制が守れなくなるからです。

 

というわけで、固定相場制を採用するためには、現在の物価水準で日本と米国の物価が等しくなるようなレートに決める必要があります。

 

ところが、米国と日本ではインフレ率が違います。米国のほうがインフレ率が高いので、固定相場制を採用してから暫くすると、米国のほうが物価が高くなるので、米国人が日本に買い物に来るようになります。

 

そうなると、銀行にはドル売りの客ばかり来て、ドル買いの客が来ないので、固定相場制が維持できなくなってしまうのです。それがわかっているから、最初から固定相場制を採用しないわけです。

 

日本政府としては、固定相場制を守るために米国人が売ったドルを全部買う、と言う選択肢もありますが、それは非常に危険です。時間の経過とともに米国の物価のほうが日本より遥かに高くなり、最後には米国人が全員でドルを持って日本に買い物に来るようになるでしょう。それを全部日本政府が買うというのは、到底現実的ではありません。

 

ということは、いつかは固定相場制が廃棄されて変動相場制になり、ドルが大幅に値下がりするはずです。そうなったときには、それまで日本政府が購入した大量のドルが損失を抱えることになるわけで、それが予想できるなら、固定相場制は採用すべきではありません。

 

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経済評論家

1981年東京大学法学部卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。主に経済調査関連の仕事に従事したのち、2005年に退職して久留米大学へ。現在は久留米大学商学部教授であるが、当サイトへの寄稿は勤務先と無関係に個人として行なっているものであるため、現職欄には経済評論家と記すものである。

著書に、『老後破産しないためのお金の教科書―年金・資産運用・相続の基礎知識』『初心者のための経済指標の見方・読み方 景気の先を読む力が身につく』(以上、東洋経済新報社)、『なんだ、そうなのか! 経済入門』(日本経済新聞出版社)、『退職金貧乏 定年後の「お金」の話』『なぜ、バブルは繰り返されるか?』(以上、祥伝社)、『経済暴論』『一番わかりやすい日本経済入門』(以上、河出書房新社)など多数。

趣味はFacebookとブログ。

著者紹介

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