急騰していた商業地価だが…恐ろしい「転換期」
[図表]は、主要都市の代表的な商業地価の推移をリーマンショック直前のミニバブルの時と比較したものである。デフレ経済下の日本で、金融緩和による大量の余剰資金が流入した「地点」が暴騰したことが示されている。
京都市は、リーマンショック後に坪単価は799万円まで下落したが、安倍政権発足以降、急騰し、2020年には坪当たり2244万円にV字回復をして、2012年比では約2.8倍にもなっている。
今回のコロナ禍で、収益力の低下したホテル・簡易宿泊所、飲食業・小売業の入居していた店舗、さらに働き方改革によるオフィスの空室増加など、コロナ禍を契機として都心不動産の収益力低下は、当面、続くことが予想される。
その不動産の価値評価は低下する。都心の商業地価の下落は、今後、鮮明になっていく。
市場では、すでに2020年夏前後には、この変化を織り込んでいる。民間だけでなく、国税庁も早い時期から路線価の減額修正を検討するなど、地価下落を想定した相続時の評価への対応も考えている様子がうかがえたが、その後、見守ることにした。
東京・銀座では、2020年9月時点ですでに坪単価が下落している(国土交通省「都道府県地価調査」より)。今回の価格調整は、大都市の都心一等地の商業地価から下落が始まり、暴騰した分だけ調整の幅も大きくなる可能性が高いと考えられる。
合理性のない水準にまで高騰したのだから、修正は当然のことと言える。すでに、2019年から、不動産市場では価格調整が始まっており、その歩みは緩やかではあるが、新型コロナウイルスによる経済活動の停滞が、地価を押し下げ始めている。コロナ禍で地価の下落が目立つのは、郊外ではなく、大都市の中心部や歓楽街である。
オフィスや店舗の解約が少しずつ始まっていることが、下落の要因となっている。これまで地価上昇の牽引役だった大都市の商業地価が転換期を迎えている。
金余り※2資金による不動産価格の高騰が続いてきたが、パンデミックによりバブル崩壊を早めた。この現象は世界同時になる可能性も否定できない。
※2 金余り…コロナ禍の旅行やイベント自粛により、所得に余裕のある人の手元資金はますます増えている状況にある。富裕層の余裕資金は、行き場を失って不動産に流入する現象を生んだ。
2021年以降は、人口減少、高齢化社会の進行、格差社会、気候変動、不動産市場の構造的需給緩和に加え、コロナ禍を契機としたデジタル社会の推進によって、不動産の需給関係の急激な変化が想定される。その結果、大都市、特に、都心部の地価の評価に大きな変化が生まれることになる。
今回のコロナショックは、従来までの生活や働き方を考え直す契機をつくっただけでなく、人生のあり方についての意識改革を我々に迫ったと言える。
幸田 昌則
不動産市況アナリスト