(※写真はイメージです/PIXTA)

英国国立ウェールズ大学経営大学院にて「医療経営学修士号」を取得した臨床医である角田圭雄氏の著書『MBA的医療経営』より一部を抜粋・再編集し、医療経営についての見解を紹介します。

臨床医学と経営学の共通点は「人を対象にする」こと

医療専門職は理系出身者が多いせいか、経営学といった言葉そのものにアレルギーをお持ちの方も多いと思います。しかし、実際には臨床医学と経営学には多くの共通点があります。

 

内科や外科などの臨床医学は単独で成立している学問ではなく、解剖学、生理学、病理学、薬理学などの基礎医学を発展応用し、医療へ実用化した学問であり、治療対象は“疾患”です。

 

一方、経営学も社会学、経済学、法学、心理学などの学問を礎にし、治療対象は企業や病院などの“組織”です。したがって、臨床医学と経営学にはさまざまな学問を統合的に考察し、問題点を治療するという共通点があります(図1)。

 

図1:臨床医学と経営学の共通点

 

さまざまな基礎医学を統合して臨床医学を考察できる医療者には、経営学的な思考は比較的容易な学びです。さらに、経営学=財務と考え、貸借対照表や損益計算書などの財務諸表のことばかりに囚われているのではないかといった誤解があります。

 

しかし、臨床医学も経営学も、あくまで疾患で悩む、あるいは組織の内で悩む“人”を対象とした学問です。

 

したがって、コンサルタントなどの医療現場を理解していない経営専門家に経営を任せるのではなく、現場で働く医療者自身が医療経営学をリードすべきだと考えています。

 

さらに、コンサルタントが提供するのはあくまで経営術であって、アカデミックな経営学ではありません。

 

医学も経営学もともに学問であり複雑な現実の現象から単純な示唆(implication)を得る作業です。

 

学会や研究会の発表の際の結論の項目でしばしば認めるのですが、いろいろとデータを検討した結果、最終の結語で「結局一症例ずつ工夫して診療すべきです」といったような結論では、複雑な現象を複雑に解釈しただけであり、学問とは呼べないと考えます。

 

複雑な現象を複雑に解析し、シンプルな結論を得て、示唆をメッセージとして送ることが重要です。英語ではKeep it simple, stupid(KISS)と言われます。

 

また優れた暗黙知を持っているならそれは誰もが模倣できる形式知に作りあげていくことが必要です。

 

医師は常に医療職全体のリーダーであり、たとえ部長や院長といった管理者でなくてもリーダーシップを発揮すべき立場にあります。

 

しかし、医学部の教育では経営学やマネジメントに関する教育を受ける機会は与えられませんでしたし、臨床医の多くがプレイングマネジャーであり、マネジメントのみに徹することができないのが現状です。

 

また病院においては臨床医として周囲から尊敬されているプレイヤーが管理者の立場に就くことが一般的で、マネジメント力がないのも仕方のないことかもしれません。

 

しかし臨床医学も経営学も、研究対象は人であり、最終的には「人間とは何か?」を考え、人間の幸福を追求する学問と言えます。

※本記事は幻冬舎ゴールドライフオンラインの連載の書籍『MBA的医療経営』(幻冬舎MC)より一部を抜粋したものです。最新の法令等には対応していない場合がございますので、あらかじめご了承ください。

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録
会員向けセミナーの一覧