3歳児が突然の登園拒否。原因不明で悩む中、母が取った行動 (※写真はイメージです/PIXTA)

小児科医である大宜見義夫氏の著書『爆走小児科医の人生雑記帳』より一部を抜粋・再編集し、著者の孫・ター坊を実例とした幼い子供の心理症例を紹介します。

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登園を嫌がる孫。その原因は「フラッシュバック」?

三歳のター坊が突然登園をしぶりだした。当初、「ポンポン イタイ アチタイク(明日行く)」と言っていたが、とうとう行けなくなった。

 

そのくせ、家では食欲モリモリ、うんちバンバン、いとこらと元気にはしゃぎ回って遊んでいる。それなのに登園をしぶり、なだめすかして連れて行っても玄関の前でふんばり立ち、中へ入ろうとしない。

 

母親が担任の先生にいろいろ聞いてみたが心当たりがなく、担任自身も困惑していた。そこで、登園をしぶりだした日の前日に何かなかったか、もう一度、担任に相談したところ、こんな出来事があった。

 

当日、担任は原爆投下の悲惨さを伝える『まちんと』という名の絵本の読み聞かせをしていた。原爆投下の場面を朗読しているとき、偶然にもオスプレイが轟音を立てて上空を通過、子どもたちは悲鳴を上げ耳をふさいだ。その翌日から、ター坊は登園をしぶりだしたのである。

 

登園をしぶるター坊を前に母親はやむなく仕事を休み、ター坊と向き合った。観察していると、ター坊はいとこらと元気に遊んでいながらも時々思い出したように母親のそばに駆け寄り、「ママ、トコニモイカンデヨ」と言ったりした。

 

母親には、思い当たることがあった。

「ママ、サミチカッタ?」「さみしかったよ」

五か月前、母親が突然重度の扁桃周囲炎に罹患、県立中部病院耳鼻科に一週間入院した時のことだ。そのときは、ター坊を実家の祖母にあずかってもらったが、母親のことはすっかり忘れたように、いとこらと元気にはしゃぎ回っていた。退院後、母親が急いで駆けつけてもター坊はケロリとしていたので母親はすっかり安心していた。

 

それから五か月、母親の不在体験をすっかり忘れていたはずのター坊が、保育園での読み聞かせの時間に、戦争、死、爆音という不穏な出来事が偶然重なったことで封印されていた記憶がよみがえって不安が顕在化し、分離不安状態を引き起こしたのではないか……。一種のフラッシュバックのようなものではないか……、と考えた。

 

フラッシュバックとは精神科領域の用語で、強いトラウマ体験(心的外傷体験)を受けた後、その記憶が何かのきっかけでよみがえり、強い不安やパニック状態に陥る心理現象だ。

 

母親にフラッシュバックの可能性について伝え、ター坊と向き合わせた。

 

「ター坊、覚えている? ママ、病気で入院して帰れなかったこと……、あのとき何も言わなくてごめんね、次からはきちんと言うからね。もう、いなくなることはないから大丈夫よ」

 

「ママ、サミチカッタ?」

 

「さみしかったよ、とっても……」

 

「ターもサミチカッタ……」

 

その翌日からター坊は元気に登園を再開した。

 

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大宜見義夫(おおぎみ よしお)

 

1939年9月 沖縄県那覇市で生まれる
1964年 名古屋大学医学部卒業
北海道大学医学部大学院に進み小児科学を専攻
1987年 県立南部病院勤務を経ておおぎみクリニックを開設
2010年 おおぎみクリニックを閉院
現在 医療法人八重瀬会同仁病院にて非常勤勤務
医学博士
日本小児科学会専門医 日本心身医学会認定 小児診療「小児科」専門医
日本東洋医学会専門医 日本小児心身医学会認定医
子どものこころ専門医
沖縄エッセイストクラブ会員
著書:
「シルクロード爆走記」(朝日新聞社、1976年)
「こどもたちのカルテ」(メディサイエンス社、1985年。同年沖縄タイムス出版文化賞受賞)
「耳ぶくろ ’83年版ベスト・エッセイ集」(日本エッセイスト・クラブ編、文藝春秋、1983年「野次馬人門」が収載)

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著者紹介

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※本記事は幻冬舎ゴールドライフオンラインの連載の書籍『爆走小児科医の人生雑記帳』(幻冬舎MC)より一部を抜粋したものです。最新の法令等には対応していない場合がございますので、あらかじめご了承ください。
※「障害」を医学用語としてとらえ、漢字表記としています。

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