ジャクソンホール会議後に欧米株が上昇した理由は? (※画像はイメージです/PIXTA)

8月27日に開催されたジャクソンホール会議におけるパウエルFRB議長講演では、引き続き年内のテーパリング開始が適切との判断が示された一方、インフレ上振れは一時的であり、テーパリングは利上げ時期の直接的なシグナルにはならないとしたことから、マーケットにおける早期利上げ懸念を払拭した。

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ジャクソンホール会議のポイントは3つ

注目されたジャクソンホール会議におけるパウエルFRB(米国連邦準備制度理事会)議長講演は、7月FOMC(米国連邦公開市場委員会)議事要旨で明らかとなったFOMCメンバーの見解に概ね沿った内容となった。その講演でのポイントとしては3つ挙げられる。

 

1つ目は「テーパリングの開始時期」だ。7月FOMC議事要旨では大半のFOMC参加者が年内のテーパリング開始が適切だと指摘したが、ジャクソンホール会議でのパウエルFRB議長の発言からも同様の見解が示された。予想通りテーパリング開始の具体的な時期については言及されなかったものの、このまま順調に景気が回復すれば年内にテーパリングが開始されることが既定路線となりつつあることが明らかとなった。

 

2つ目は「インフレ」だ。パウエルFRB議長は足元のインフレ率の上振れが従来通り「一時的」であるとの見解を繰り返し、FRBが利上げを急いでいないことを印象づけた。

 

そして、3つ目が金融政策手段における「テーパリング」と「利上げ」の切り離しだ。パウエルFRB議長はテーパリングの開始時期とそのペースは、将来の利上げ時期の直接的なシグナルにはならないとした。これもマーケットにおける早期利上げ懸念を払拭させる狙いがあったと見られる。

FRBが利上げを開始するまでにはかなりの時間があると解釈された模様

欧米株式市場はジャクソンホール会議後に上昇する展開となった(図表1、2)。

 

日次、配当無し、米ドル建て、単位:米ドル、期間:2021年7月30日~8月27日 出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ投信投資顧問作成
[図表1]NYダウ指数(米国株)ローソク足 日次、配当無し、米ドル建て、単位:米ドル、期間:2021年7月30日~8月27日
出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ投信投資顧問作成

 

日次、配当無し、ユーロ建て、単位:ポイント、期間:2021年7月30日~8月27日 出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ投信投資顧問作成
[図表2]STOXX600指数(欧州株)ローソク足 日次、配当無し、ユーロ建て、単位:ポイント、期間:2021年7月30日~8月27日
出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ投信投資顧問作成

 

一部の市場参加者の間では、ジャクソンホール会議でテーパリングの開始時期について踏み込んだ発言がなされることを警戒する見方もあったようだが、大方の予想通りテーパリングの開始時期については年内に行うことが適切との主張を繰り返した。また、前述したとおりインフレについては「一時的」であり、金融政策手段における「テーパリング」と「利上げ」を明確に区別したことも相まって、マーケットではFRBが利上げを開始するまでにはかなりの時間があると解釈されたようだ。

 

欧米株式市場がジャクソンホール会議後に上昇した背景には、「テーパリング開始」=「利上げ時期の前倒し」とマーケットに解釈させなかったパウエルFRB議長の「対話力」があったと言えよう。

年内は「いいとこ取り相場」が形成されやすくなる可能性も

前回のレポート『7月FOMC議事要旨の解釈とジャクソンホール会議の見通し』でも言及させて頂いたとおり、FOMCメンバーの想定通り景気が順調に回復すれば、テーパリングの開始時期については引き続きFOMC開催月の今年11月又は12月を予想する。また、株式市場への影響という点では、年内のテーパリング開始がすでにコンセンサスとなりつつあることから、2013年当時の「テーパータントラム」の再来にはならないと考える。むしろ、テーパリングが開始されることは景気が順調に回復している証左と解釈され、株高になるシナリオが想定される。

 

一方、デルタ型変異ウイルスの感染拡大によって景気が落ち込んでも、テーパリング開始が先送りされることで緩和的な金融政策が継続され、(結果的に)株高になるシナリオも想定される。このため、年内は「いいとこ取り相場」が形成されやすくなる可能性もある。

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『ジャクソンホール会議後に欧米株が上昇した理由は?』を参照)。

 

(2021年8月30日)

 

田中 純平

ピクテ投信投資顧問株式会社 ストラテジスト

 

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ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト 

日系運用会社に入社後、14年間一貫して外国株式の運用・調査に携わる。主に先進国株式を対象としたアクティブ・ファンドの運用を担当し、北米株式部門でリッパー・ファンド・アワードを受賞。アメリカ現地法人駐在時は中南米株式ファンドを担当し、新興国株式にも精通。ピクテ入社後は、ストラテジストとしてセミナーやメディアなどを通じて投資家への情報提供に努める。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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