英国の社会実験が示すコロナ収束への道 (※画像はイメージです/PIXTA)

英国政府が発表した『イベント調査プログラム フェーズIII』の報告書は、「withコロナ」状態において大規模イベントが開催可能であることを示した。これは経済活動にも応用できるものだが、鍵は明らかにワクチン接種だ。日本国内ではデルタ型による感染第5波が猛威を振るい、学校のクラスターと家庭内感染が懸念される。ただし、2022年には経済活動が正常化するのではないか。

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英国の社会実験:「withコロナ」下での経済活動の在り方示す

8月20日、英国政府は新型コロナに関する『イベント調査プログラム フェーズIII』の報告書を発表した。同調査は4月から実施され、フェーズIIIではサッカー欧州選手権、テニス全英オープン、F1の英国グランプリなどが対象とされた。ワクチンの2回接種を条件に、観客を入れて大規模イベントを行い、新型コロナの感染状況を追跡調査したものだ。

 

結果を見ると、サッカー欧州選手権は、開催時期におけるイングランド地方の平均感染率を上回った(図表1)。

 

注:フェーズIIIの主要3イベントについて報告書のデータを活用して計算 出所:英国政府の報告書よりピクテ投信投資顧問が作成
[図表1]英国イベント調査プログラム フェーズIII 注:フェーズIIIの主要3イベントについて報告書のデータを活用して計算
出所:英国政府の報告書よりピクテ投信投資顧問が作成

 

もっとも、これは決勝に地元イングランドが進出、当日はチケットを持たない集団がスタジアムに乱入し、感染対策が守られなかった結果だ。ほぼ同時期に行われたテニスのウィンブルドン大会は、2週間でのべ30万人以上の観客を会場に入れたが、感染率はイングランドの平均を大きく下回った。英国政府は、ワクチン接種者がルールを守れば、「大型の文化・スポーツイベントを安全に開催することは可能」と総括している。

 

感染第5波に見舞われている日本でも、同様の傾向を示すデータが公開された。8月18日、大阪府が開いた新型コロナウイルス対策本部の会議で提出された資料によれば、6月1日〜8月15日までに確認された府内の新規感染者は3万2,740人、重症者326人、死者は101人だった。このうちワクチンの2回接種後14日以降に発症した人は303人に止まり、このカテゴリーに重症者、死者はいなかった。

 

また、内閣官房、厚労省のデータでは、8月23日時点において、2回目のワクチン接種率と直近1週間における人口対比の新型コロナの新規感染者を47都道府県別に見ると、負の相関関係が明らかになる(図表2)。これは、ワクチン接種の進捗が、感染抑制に効果的であることを示すだろう。

 

期間:2021年8月23日現在 出所:内閣官房、厚労省のデータよりピクテ投信投資顧問が作成

[図表2]都道府県別ワクチン接種率と新規感染者数 期間:2021年8月23日現在
出所:内閣官房、厚労省のデータよりピクテ投信投資顧問が作成

2022年の日本経済:正常化へ向かうが元通りにはならない

こうして内外のデータを見る限り、新型コロナの新規感染、重症化抑止に関して、ワクチンは極めて有効だ。日本が米欧に周回遅れで感染のピークを迎え、経済活動の障害となっているのは、ワクチン接種の出遅れが要因と言える。医療従事者への接種は終了、高齢者も84.1%が2回の接種を完了したものの、12~64歳の2回目の接種率は19.0%に過ぎない。足下、10代以下の感染が急増していることから、新学期が始まりつつある学校でクラスターが発生した場合、家庭内感染を通じて第5波を長引かせる可能性もあるだろう。

 

もっとも、このところ1日120万回程度のペースで接種は進んでいる。この状態を維持できれば、年内には国民の80%程度が2回のワクチン接種を終えるのではないか。

 

新型コロナウイルスは、感染症の専門家が驚くほど変異が速く、当面、完全に撲滅するのは不可能と見られる。一方、英国の大規模イベントの例で明らかなように、ワクチンの接種に加え、「withコロナ」を前提として過度の密集の回避など一定のルールを課した状態であれば、2022年には日本でも経済活動の正常化が図られるだろう。

 

ただし、「正常化」は必ずしも元に戻ることを意味しない。新型コロナがもたらした社会・経済の変化は、ポスト・コロナ期にも引き継がれ、それは市場にも影響を及ぼすのではないか。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『英国の社会実験が示すコロナ収束への道』を参照)。

 

(2021年8月27日)

 

市川 眞一

ピクテ投信投資顧問株式会社 シニアフェロー

 

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ピクテ投信投資顧問株式会社 シニア・フェロー

日系証券の系列投信会社でファンドマネージャーなどを経て、1994年以降、フランス系、スイス系2つの証券にてストラテジスト。この間、内閣官房構造改革特区評価委員、規制・制度改革推進委員会委員、行政刷新会議事業仕分け評価者など公職を多数歴任。
著書に『政策論争のデタラメ』、『中国のジレンマ 日米のリスク』(いずれも新潮社)、『あなたはアベノミクスで幸せになれるか?』(日本経済新聞出版社)など。
2011年6月よりテレビ東京『ワールドビジネスサテライト(WBS)』レギュラー・コメンテーター。

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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