(※画像はイメージです/PIXTA)

8月31日に発表された8月ユーロ圏CPIの上振れや、相次ぐECB理事会メンバーのタカ派発言によって、マーケットではECBのテーパリング観測が浮上している。今のところ欧州株式市場への影響は限定的となっているが、テーパリングを実行するにあたってはパウエルFRB議長と同様、ラガルドECB総裁も市場との「対話力」が求められることになる。

インデックスファンドより高いリターンを狙う!
「アクティブファンド特集」を見る

8月ユーロ圏消費者物価指数(CPI)が市場予想を上回る

8月31日に発表された8月ユーロ圏消費者物価指数(CPI)速報値は前年同月比+3.0%と市場予想の同+2.7%を上回り、前月の+2.2%から加速した(図表1)。

 

月次、単位:%、期間:2016年7月~2021年8月、2021年8月は速報値 出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ投信投資顧問作成
[図表1]ユーロ圏消費者物価指数(CPI)の推移 月次、単位:%、期間:2016年7月~2021年8月、2021年8月は速報値
出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ投信投資顧問作成

 

足元のインフレ率の上振れは一時的と捉える見方はあるものの、世界的に物価上昇圧力が高まる中では、欧州においても物価見通しに対して警戒感が強まってもおかしくない状況だ。

 

ここにきて欧州中央銀行(ECB)当局者の発言にも変化が表れ始めている。ECB理事会メンバーのホルツマン・オーストリア中銀総裁は8月31日、新型コロナウイルスの危機に対応する資産購入の特別枠である「パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)」の縮小を検討できる状況になっているとし、9月9日のECB理事会で10-12月期の縮小開始が議論されるとの見方を示した。

 

また、ECB理事会メンバーのワイトマン独連銀総裁は翌日9月1日、経済が回復し、インフレが上向く中で、ECBはPEPP終了に向けて準備し始める必要があると語った。さらに、ECBのラガルド総裁は同日、ユーロ圏経済は新型コロナウイルスによるパンデミックから回復しつつあり、なお苦境に立つ一部のセクターに的を絞った外科的な支援のみが必要だとの認識を示した。

ECBのテーパリング観測による欧州株への影響は今のところ限定的

次回9月9日のECB理事会では、今年4月以降に実行された「(年初よりも)かなり速いペースでの」PEPPを減速させる方針が示されるかが焦点になる。PEPPは今年1-3月に毎月平均622億ユーロのペースだったが、これが4-7月は毎月平均821億ユーロに増額されている(図表2)。

 

月次、単位:億ユーロ、期間:2016年7月~2021年7月 出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ投信投資顧問作成
[図表2]ECB資産購入額の推移 月次、単位:億ユーロ、期間:2016年7月~2021年7月
出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ投信投資顧問作成

 

8月ユーロ圏CPIの上振れ後に相次いだECB理事会メンバーのタカ派発言は、PEPPの減額(テーパリング)に向けた地ならしとも解釈できる。いずれにせよ、次回理事会ではECB理事会メンバーの真意がある程度明らかになるだろう。

 

前述した8月ユーロ圏CPIの上振れとECB理事会メンバーのタカ派発言をきっかけとしたECBのテーパリング観測の高まりから、8月31日以降の欧州債券市場ではドイツ10年国債利回りが上昇、為替市場でもユーロ高米ドル安となったが、欧州株式市場(STOXX600指数)への影響は今のところ限定的となっている(図表3)。

 

日次、配当無し、ユーロ建て、単位:ポイント 期間:2021年7月30日~9月3日 出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ投信投資顧問作成
[図表3]STOXX600指数(欧州株)ローソク足 日次、配当無し、ユーロ建て、単位:ポイント
期間:2021年7月30日~9月3日
出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ投信投資顧問作成

 

8月27日のジャクソンホール会議でのパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の「対話力」が際立ったように、欧州株式市場が今後波乱無くECBのテーパリングを消化するには、ラガルドECB総裁の「対話力」が求められることになる。その試金石とも呼べるイベントが、次回のECB理事会になる可能性がある。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『ECBのテーパリング観測が高まる 欧州株の波乱はあるのか?』を参照)。

 

(2021年9月6日)

 

田中 純平

ピクテ投信投資顧問株式会社 ストラテジスト

 

日本経済の行方、米国株式市場、新NISA、オルタナティブ投資…
圧倒的知識で各専門家が解説!カメハメハ倶楽部の資産運用セミナー

 

カメハメハ倶楽部セミナー・イベント

 

【12/10開催】
相続税の「税務調査」の実態と対処方法
―税務調査を録音することはできるか?

 

【12/10開催】
不動産「売買」と何が決定的に違うのか?
相続・事業承継対策の新常識「不動産M&A」とは

 

【12/11開催】
家賃収入はどうなる?節目を迎える不動産投資
“金利上昇局面”におけるアパートローンに
ついて元メガバンカー×不動産鑑定士が徹底検討

 

【12/12開催】
<富裕層のファミリーガバナンス>
相続対策としての財産管理と遺言書作成

 

【12/17開催】
中国経済×米中対立×台湾有事は何処へ
―「投資先としての中国」を改めて考える

 

 

【ご注意】
●当レポートはピクテ投信投資顧問株式会社が作成したものであり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。当レポートに基づいて取られた投資行動の結果については、ピクテ投信投資顧問株式会社、幻冬舎グループは責任を負いません。
●当レポートに記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当レポートは信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当レポート中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資家保護基金の対象とはなりません。
●当レポートに掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録