(※画像はイメージです/PIXTA)

「私もずっと『孤独』でした」と語るのは精神科医の和田秀樹氏。現代病理の多くが孤独や疎外感が「根っこ」になっていると指摘する。多くの人が悩む「何となく寂しい」から逃れる「孤独の作法」とは。※本連載は和田秀樹氏の著書『孤独と上手につきあう9つの習慣』(大和書房)から一部を抜粋し、再編集したものです。

人間はストレス耐性に強い生きものではない

そして、コロナ時代以前から問題になっている、ひきこもりやスクールカーストも、孤独や疎外感をはずしては語れません。

 

スクールカーストという学校内での人気の序列は、「みんなと合わせていないと嫌われる」という恐怖感から生じるとされています。表向きの仲間は多くても決して本音が出せないのですから、当事者の多くが疎外感に悩まされることも多くあるでしょう(今から40年以上前に、精神分析学者の小此木啓吾先生はこれを「同調型ひきこもり」と呼びました)。

 

一時期話題になった便所飯症候群(ランチ仲間がいないことを極端に恥ずかしく思い、トイレで隠れて弁当を食べること)。これも、仲間がいないのがわかると寂しいやつだとバカにされるという意味での対人不信の病理、つまり、孤独や疎外感の病理ともいえるものです。

 

モンスターペアレントや暴走老人というのも、「どうしてちゃんと相手にしてくれないのか!」という疎外感の裏返しで、思い切り厚かましくなるという側面があるはずです。

 

人間は、それほどストレス耐性の強い生きものではないという。(※写真はイメージです/PIXTA)
人間は、それほどストレス耐性の強い生きものではないという。(※写真はイメージです/PIXTA)

 

人間は、それほどストレス耐性の強い生きものではありません。

 

これほど多くの現代病理の原因になっている背景には、孤独や疎外感というものが、いかに人を生きにくくさせているか、ストレスの原因になっているか、という証拠だといえるでしょう。

 

しかもこれらの「名づけられた」現象は、孤独や疎外感というものが生み出す問題のほんの一部にすぎません。

 

実際、これらの病理よりはずっと軽いレベルですが、自分の居場所で安心してくつろげない、本心が出せないという人は、かなり多くいるでしょう。みんなに合わせて生きるのに疲れたという人もいるでしょう。

 

とくに現代社会では、インターネットによる表面的なつながりを持ちやすいため、こうした孤独や疎外感というものが巧妙に隠される傾向にあります。

 

表面上はうまくやっているとか、ネット上の「友達」は多いという「見えない孤独」は数多く存在します。

 

自分でもそれに気づかず、いつのまにか心をさいなまれ、依存症や不安障害といった精神疾患にかかっている人も少なくありません。

 

慢性的に、なんとなく寂しい、安心できない、孤独だという感覚に苦しめられているのです。

 

もちろん、孤独というのは、上手につきあうことができれば、自分の精神世界や人格に深みを与えてくれるものでもあります。

 

昔の格言や文学作品には孤独を扱ったものがたくさんあることからわかるように、孤独といかにつきあうかというのは、洋の東西を問わず、人が生きるうえでの一大テーマでした。しかし、孤独が巧妙に隠される傾向にある現代社会においては、孤独や疎外感に対して、受け身の姿勢ではなく、より自覚的に向き合う必要があると思います。

 

次ページ「孤独の作法」は現代人に必須の教養である
孤独と上手につきあう9つの習慣

孤独と上手につきあう9つの習慣

和田 秀樹

大和書房

人間はそれほどストレス耐性の強い生きものではないという。 孤独や疎外感がいかに人を生きにくくさせているか、ストレスの原因になっているか。実際、病気にはなっていないけれども自分の居場所で安心してくつろげないという…

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