韓国中銀、市場予想に反して利上げをした理由 (※写真はイメージです/PIXTA)

今日のヘッドライン21年6月1日号『韓国中銀、正常化のかすかな兆し』で韓国銀行(中央銀行)がタカ派(金融引締めを選好)に転じたことを指摘しました。市場でも利上げに対する観測は見られましたが、今回は市場予想の過半が据置きを見込んでいました。韓国における新型コロナウイルスの足元の感染動向から利上げを控えるとの見方が優勢だったからです。それでも韓国中銀は利上げを決定しました。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報・ヘッドラインを転載したものです。

インデックスファンドより高いリターンを狙う!
「アクティブファンド特集」を見る

韓国中銀:市場では過半が据置きを予想する中、韓国中銀は利上げを決定

韓国銀行(中央銀行)は2021年8月26日、新型コロナウイルスの感染再拡大を受け、市場の過半が据置きを予想する中、政策金利を0.25%引き上げ、0.75%としました(図表1参照)。韓国中銀はアジアではコロナショック後に利上げする最初の中銀となりました。

 

日次、期間:2019年8月27日~2021年8月27日(日本時間正午) 出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表1]韓国ウォン(対ドル)レートと政策金利の推移 日次、期間:2019年8月27日~2021年8月27日(日本時間正午)
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

どこに注目すべきか:韓国中銀、利上げ、債務問題、感染再拡大

今日のヘッドライン21年6月1日号『韓国中銀、正常化のかすかな兆し』で韓国中銀がタカ派(金融引締めを選好)に転じたことを指摘しました。市場でも利上げに対する観測は見られましたが、今回は市場予想の過半が据置きを見込んでいました。韓国における新型コロナウイルスの足元の感染動向から利上げを控えるとの見方が優勢だったからです(図表2参照)。それでも韓国中銀は利上げを決定しました。
 

日次、期間:2020年1月20日~2021年8月25日、7日移動平均 出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表2]韓国の新型コロナウイルス新規感染者数の推移 日次、期間:2020年1月20日~2021年8月25日、7日移動平均
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

韓国中銀の李柱烈(イ・ジュヨル)総裁は記者会見で利上げの理由について、景気回復、インフレ率上昇懸念、金融不均衡(低金利による住宅価格の高騰と債務の増加)の3点をあげています。

 

まず、韓国の景気回復について、韓国中銀が四半期ごとに公表している経済見通し(Economic Outlook)で確認します(図表3参照)。

 

予想時点:2021年5月(左)~2021年8月(右)、21年と22年を予想 出所:韓国中央銀行のデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表3]韓国中銀の経済成長率とインフレ率の予想 予想時点:2021年5月(左)~2021年8月(右)、21年と22年を予想
出所:韓国中央銀行のデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

韓国中銀は韓国経済のGDP(国内総生産)成長率を21年は4.0%、22年は3.0%と見込んでいます。前回5月の経済見通しで、内需拡大や半導体による堅調な輸出を背景に2月の予想から上方修正しました。8月の予想は5月と同水準で、堅調な景気回復に対する認識を維持したと見られます。

 

次にインフレ率(消費者物価指数、CPI)予想については8月に上方修正しています。韓国中銀は経済見通しのレポートで農畜産物価格や原油価格の上昇を反映させたと説明しています。また韓国中銀の声明文では、これらの要因に加えて、サービス価格などの上昇を指摘しています。また、インフレ期待も2%半ばまでの上昇を指摘しています。インフレ率予想の上方修正は主にこれらの要因を反映したと思われます。ただ、食料品とエネルギーを除いたコアCPIの予想は5月とほぼ同じ(22年のみ0.1%上方修正)でした。

 

最後に、金融不均衡という表現で、韓国の過剰債務問題を懸念しています。韓国の家計債務は6月末時点で約1806兆ウォン(約170兆円)にものぼり、内訳は大半が住宅ローンで、他に自営業の開業資金などが見られます。最大の懸念はやはり住宅ローンの増加で、韓国では17年頃から金融機関が住宅ローンに貸せる割合を示すLTV比率を引き下げ住宅ローン(債務拡大)の抑制に転じていました(以前は緩和的であった)。しかし新型コロナの対応で低金利政策を導入、住宅市場へ再び資金が流入しやすい構図となっていたことから、対応を求める声も強くなっていました。

 

韓国は新型コロナの感染再拡大に見舞われています。経済、医療への影響が懸念されます。それでも韓国のインフレ懸念や債務問題(住宅価格の高騰)の解消を優先しており、韓国中銀は重い決断を迫られたと見受けられます。コロナとの共存では、新たな覚悟を求められることもあるようです。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『韓国中銀、市場予想に反して利上げをした理由』を参照)。

 

(2021年8月27日)

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社

運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

\PR/ 年間延べ2000人以上が視聴!
カメハメハ倶楽部
「資産運用」セミナー

 

【カメハメハ倶楽部のイベント・セミナー】

※<特設ページ>富裕層のためのヘッジファンド活用

 

【1/22開催】金融資産1億円以上の方が知っておくべき「民事信託」のキホン 

 

【1/25開催】医師専門の税理士による自己資金0で「医院開業を成功させる」4つのポイント

 

【1/25開催】希少な“FIT型案件”あり!FITからNon-FITへ…「太陽光発電」投資の最新事情 

 

【1/26開催】ファンド・オブ・ヘッジファンズ会社による「投資対象」としてのヘッジファンドの魅力

 

【1/29開催】金融資産1億円以上の方のための「本来あるべき資産運用

ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト 

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

著者紹介

連載PICTETマーケットレポート・ヘッドライン

【ご注意】
●当レポートはピクテ投信投資顧問株式会社が作成したものであり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。当レポートに基づいて取られた投資行動の結果については、ピクテ投信投資顧問株式会社、幻冬舎グループは責任を負いません。
●当レポートに記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当レポートは信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当レポート中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資家保護基金の対象とはなりません。
●当レポートに掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

登録していただいた方の中から
毎日抽選で1名様に人気書籍をプレゼント!
会員向けセミナーの一覧