韓国中銀の姿勢に変化が見られました。経済見通しを引き上げたこと、慎重な言葉選びながら緩和的な金融政策からの脱却の検討を示唆しています。政策金利の引き上げという意味ではなく、正常化に向けた議論を開始する可能性を示唆したと思われます。新興国では主に資源国に見られた正常化の検討が輸出国にも広がる兆しなのかもしれません。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報・ヘッドラインを転載したものです。

「相続税の税務調査」に 選ばれる人 選ばれない人
>>1月16日(木)開催・WEBセミナー

韓国中銀:政策金利は市場予想通り据置くも、経済見通しを引き上げ、タカ派寄りに

韓国銀行(中央銀行)は2021年5月27日、市場予想通りに政策金利を0.50%に据え置くと発表しました。同日の声明で21年の経済成長見通しについて、経済成長率を4%増と2月時点の3%増から引き上げました。また、インフレ率予想も2月時点の1.3%増から1.8%増に引き上げました。

 

加えて、韓国中銀の李総裁は経済状況の改善に伴い非常に緩和的な政策とは違う措置を採るべきと述べ、急ぐ必要はないが、遅きに失するべきではないと指摘しました。

どこに注目すべきか:韓国、上方修正、輸出、家計債務、正常化

韓国中銀の姿勢に変化が見られました。経済見通しを引き上げたこと、慎重な言葉選びながら緩和的な金融政策からの脱却の検討を示唆しています。政策金利の引き上げという意味ではなく、正常化に向けた議論を開始する可能性を示唆したと思われます。新興国では主に資源国に見られた正常化の検討が輸出国にも広がる兆しなのかもしれません。

 

韓国中銀の今回の金融政策決定会合がタカ派(金融引締めを選好)寄りと見られた背景は、韓国中銀の経済見通しの改善です。まず韓国経済を振り返ります。

 

韓国経済の見通しが引き上げられた背景は好調な輸出(図表1参照)、活発な投資、金融並びに財政政策の支援によると見られます。特に韓国は構造的に輸出依存経済となっており、輸出の影響が経済動向を大きく左右します。

 

月次、期間:2016年5月~2021年5月、GDPは四半期、前年同期比
[図表1]韓国GDP(国内総生産)と輸出(前年同月比)の推移 月次、期間:2016年5月~2021年5月、GDPは四半期、前年同期比

 

新型コロナウイルスの影響で、昨年輸出が大幅な落ち込みを見せたことで、韓国経済はマイナス成長となりました。しかし、世界経済と貿易の回復に伴い、韓国の輸出は昨年の低下分を上回る勢いで回復を見せています。5月の輸出も好調でした。韓国の輸出好調と経済成長の連動が続くとの見通しで、経済成長率が上方修正されています。韓国中銀同様、経済協力開発機構(OECD)も5月31日のレポートで韓国の今年の成長率を3.8%と(22年は2.8%)と見込んでいます。なお、輸出にけん引され投資も堅調です。

 

ただ、内需が出遅れ気味と見られます。韓国は1日あたりの新規感染者数は500人前後ながら、この春から増加する局面も見られます。これは韓国では第4波に相当し、内需の重石となっています。ワクチン接種率は先のOECDのレポートによると7.3%で高いとはいえない状況です。

 

もっとも、市場ではワクチン接種に関して10%前後から「好感」する傾向もあり、韓国への資本流入は堅調とも見られます。

 

韓国経済で、むしろ気になるのは債務問題と住宅価格の上昇です。金余りとも評される中、家計の債務残高は足元上昇傾向です(図表2参照)。また、住宅価格の上昇は韓国現政権の不人気の原因とも言われており、住宅供給などの対応が求められています。

 

四半期、期間:2011年4-6月期~2021年1-3月期、変化率は前年比 出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表2]韓国の家計債務残高と変化率の推移 四半期、期間:2011年4-6月期~2021年1-3月期、変化率は前年比
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

ここまで見てきたように、韓国経済は輸出主導の回復が足元見られますが、伸び率を見ても、年後半か来年にペースダウンが想定されます。金融政策変更には経済成長の落ち着きを確認したいところと思われます。一方で一部金余りの兆候も見られ、無制限に政策対応をする局面はとうに過ぎたとみられます。こうした中、韓国中銀総裁のコメントは、まずは金融引締めを意識させるための動きと思われます。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『韓国中銀、正常化のかすかな兆し』を参照)。

 

(2021年6月1日)

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社

運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

日本経済の行方、米国株式市場、新NISA、オルタナティブ投資…
圧倒的知識で各専門家が解説!カメハメハ倶楽部の資産運用セミナー

 

カメハメハ倶楽部セミナー・イベント

 

【1/7開催】<令和7年度>
税制改正大綱を徹底解説
最新情報から見る資産運用への影響と対策

 

【1/8開催】オルカン、S&P500…
「新NISA」の最適な投資対象とは
金融資産1億円以上の方だからできる活用法

 

【1/9開催】2025年の幕開け、どうなる?日本株
長いデフレ環境を生き抜いたスパークスが考える
魅力的な企業への「長期集中投資」

 

【1/9開催】相続人の頭を悩ませ続ける
「共有名義不動産」の出口は“売却”だけじゃない!
問題点と最新の解決策を藤宮浩氏が特別解説

 

【1/12開催】相続税の
「税務調査」の実態と対処方法
―税務調査を録音することはできるか?
【見逃し配信special】

 

 

【ご注意】
●当レポートはピクテ投信投資顧問株式会社が作成したものであり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。当レポートに基づいて取られた投資行動の結果については、ピクテ投信投資顧問株式会社、幻冬舎グループは責任を負いません。
●当レポートに記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当レポートは信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当レポート中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資家保護基金の対象とはなりません。
●当レポートに掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録
会員向けセミナーの一覧