韓国中銀、正常化のかすかな兆し

韓国中銀の姿勢に変化が見られました。経済見通しを引き上げたこと、慎重な言葉選びながら緩和的な金融政策からの脱却の検討を示唆しています。政策金利の引き上げという意味ではなく、正常化に向けた議論を開始する可能性を示唆したと思われます。新興国では主に資源国に見られた正常化の検討が輸出国にも広がる兆しなのかもしれません。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報・ヘッドラインを転載したものです。

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韓国中銀:政策金利は市場予想通り据置くも、経済見通しを引き上げ、タカ派寄りに

韓国銀行(中央銀行)は2021年5月27日、市場予想通りに政策金利を0.50%に据え置くと発表しました。同日の声明で21年の経済成長見通しについて、経済成長率を4%増と2月時点の3%増から引き上げました。また、インフレ率予想も2月時点の1.3%増から1.8%増に引き上げました。

 

加えて、韓国中銀の李総裁は経済状況の改善に伴い非常に緩和的な政策とは違う措置を採るべきと述べ、急ぐ必要はないが、遅きに失するべきではないと指摘しました。

どこに注目すべきか:韓国、上方修正、輸出、家計債務、正常化

韓国中銀の姿勢に変化が見られました。経済見通しを引き上げたこと、慎重な言葉選びながら緩和的な金融政策からの脱却の検討を示唆しています。政策金利の引き上げという意味ではなく、正常化に向けた議論を開始する可能性を示唆したと思われます。新興国では主に資源国に見られた正常化の検討が輸出国にも広がる兆しなのかもしれません。

 

韓国中銀の今回の金融政策決定会合がタカ派(金融引締めを選好)寄りと見られた背景は、韓国中銀の経済見通しの改善です。まず韓国経済を振り返ります。

 

韓国経済の見通しが引き上げられた背景は好調な輸出(図表1参照)、活発な投資、金融並びに財政政策の支援によると見られます。特に韓国は構造的に輸出依存経済となっており、輸出の影響が経済動向を大きく左右します。

 

月次、期間:2016年5月~2021年5月、GDPは四半期、前年同期比
[図表1]韓国GDP(国内総生産)と輸出(前年同月比)の推移 月次、期間:2016年5月~2021年5月、GDPは四半期、前年同期比

 

新型コロナウイルスの影響で、昨年輸出が大幅な落ち込みを見せたことで、韓国経済はマイナス成長となりました。しかし、世界経済と貿易の回復に伴い、韓国の輸出は昨年の低下分を上回る勢いで回復を見せています。5月の輸出も好調でした。韓国の輸出好調と経済成長の連動が続くとの見通しで、経済成長率が上方修正されています。韓国中銀同様、経済協力開発機構(OECD)も5月31日のレポートで韓国の今年の成長率を3.8%と(22年は2.8%)と見込んでいます。なお、輸出にけん引され投資も堅調です。

 

ただ、内需が出遅れ気味と見られます。韓国は1日あたりの新規感染者数は500人前後ながら、この春から増加する局面も見られます。これは韓国では第4波に相当し、内需の重石となっています。ワクチン接種率は先のOECDのレポートによると7.3%で高いとはいえない状況です。

 

もっとも、市場ではワクチン接種に関して10%前後から「好感」する傾向もあり、韓国への資本流入は堅調とも見られます。

 

韓国経済で、むしろ気になるのは債務問題と住宅価格の上昇です。金余りとも評される中、家計の債務残高は足元上昇傾向です(図表2参照)。また、住宅価格の上昇は韓国現政権の不人気の原因とも言われており、住宅供給などの対応が求められています。

 

四半期、期間:2011年4-6月期~2021年1-3月期、変化率は前年比 出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表2]韓国の家計債務残高と変化率の推移 四半期、期間:2011年4-6月期~2021年1-3月期、変化率は前年比
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

ここまで見てきたように、韓国経済は輸出主導の回復が足元見られますが、伸び率を見ても、年後半か来年にペースダウンが想定されます。金融政策変更には経済成長の落ち着きを確認したいところと思われます。一方で一部金余りの兆候も見られ、無制限に政策対応をする局面はとうに過ぎたとみられます。こうした中、韓国中銀総裁のコメントは、まずは金融引締めを意識させるための動きと思われます。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『韓国中銀、正常化のかすかな兆し』を参照)。

 

(2021年6月1日)

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社

運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

 

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ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト 

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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