前回は、民事信託と商事信託の違いについて説明しました。今回は、信託における委託者・受託者・受益者の関係性を見ていきます。

信頼関係の維持のため、多くの義務が課される受託者

委託者は受託者と信託契約を締結するなどして信託目的の設定をし、信託財産の受託者への移転を行います。ここでは所有権だけではなく、所有者自身がすることのできる財産の管理、処分(をする権利)も受託者に委ねることになります。

 

所有権、そしてそれを管理・処分する権利を委ねるわけですから、委託者、受託者間には信頼関係がなくてはなりません。その信頼関係に基づき、さらに信頼関係を維持するため、信託法は受託者に多くの義務を課しています。

 

信託法以外に、受託者が業として不特定多数を対象とした信託業務を行っている場合には、信託業法上の義務も課されています。それらの主な項目は下記の通りです。

 

●受託者が守らなくてはいけない信託法上の義務

① 信託事務処理遂行義務(信託法29条1項)
② 善管注意義務(信託法29条2項)
③ 忠実義務(信託法30条)
④ 利益相反行為の制限(信託法31条)
⑤ 競合行為の制限(信託法32条)
⑥ 公平義務(信託法33条)
⑦財産の分別管理義務(信託法34条)
⑧ 信託事務処理の委託における第三者の選任及び監督義務(信託法35条)
⑨ 信託事務処理の報告、帳簿等の作成、保存義務(信託法36条、37条)
⑩ 損失てん補責任(信託法40条)

 

●受託者が守らなくてはいけない信託業法上の義務

① 信託の引き受けに際しての禁止行為(信託業法24条)
② 金融商品取引法の準用による義務(信託業法24条の2)
③ 説明義務(信託業法25条)
④ 契約締結時の書面交付義務(信託業法26条)
⑤ 信託財産状況報告書の交付義務(信託業法27条)
⑥ 忠実義務・善管注意義務(信託業法28条1項、同2項)
⑦ 信託財産に関する行為準則(信託業法29条)

委託者・受益者は強く守られている

委託者と受託者の関係は信頼と義務で結ばれる関係でしたが、受益者と受託者との関係は前者が後者に対して収益配当請求権等の権利を持つという関係になります。受益者が受託者に対し持つ権利として最も重要なものがこの信託の収益配当請求権で、具体的には収益の配当を要求する権利をいいます。

 

受益者は、受託者から、不動産などを運用して得た利益のうちから諸費用、信託報酬を差し引いた収益を受け取ることができます。信託財産を運用した結果、損失が出た場合には、その損失は原則として、受益者が負担することとなります。

 

ただし、一部の金銭信託においては受託者が損失てん補、利益保証を行うことが認められていることがあります。収益配当請求権以外の権利としては以下のようなものがあります。

 

●信託の基礎的な事柄に関して意思を決定する権利や信託事務の処理状況についての報告を請求する権利

●帳簿等の閲覧を請求する権利、受託者の権限違反その他の行為を取り消す権利

●法令違反行為の差し止め請求権

 

以上のような委託者、受託者、受益者の関係を下記の図表で見てみると、委託者と受託者は信頼関係とそれに呼応した義務で結ばれ、受託者と受益者は受益者を保護するための権利で結ばれているということになります。つまり、委託者、受益者は強く守られているということになるのです。

 

【図表 委託者・受託者・受益者の関係】

【POINT】

① 受託者には委託者の信頼に応えるため、多くの義務がある
② 受益者は受託者に対して複数の権利を持つ
③ 受託者と受益者は義務と権利はより強く守られている

本連載は、2013年12月2日刊行の書籍『資産運用と相続対策を両立する不動産信託入門』から抜粋したものです。その後の法改正は反映されておりませんので、ご留意ください。

資産運用と相続対策を両立する 不動産信託入門

資産運用と相続対策を両立する 不動産信託入門

編著 千賀 修一

幻冬舎メディアコンサルティング

高齢の不動産オーナーなどは、老後の不動産管理や賃貸経営、そして相続に関して、さまざまな不安要素が生じてくるものです。不動産管理に関する知識がなかったり、あるいは財産を目当てとした思わぬトラブルなどが発生したりし…

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