(※写真はイメージです/PIXTA)

「倒産」というと、赤字や負債によって起こるというイメージが強いのではないでしょうか。しかし倒産に至る本当の原因は「資金不足」です。実際、東京商工リサーチのデータによると、2020年に倒産した7773社のうち約半分が黒字であり、負債よりも資産のほうが多い会社でした。手持ちのお金が会社の明暗をどれだけ左右するのか、「6ヵ月間の無収入」でも倒産しなかった企業の例とともに見ていきましょう。

「固定費6ヵ月分の現金」があれば倒産リスクは低下

会社は、手持ちのお金がなくなった時に潰れる。これは言い換えれば、手持ちのお金があれば潰れる可能性はほとんどない、ということ。

 

つまり、経営で重要なのは資金繰り。稼ぐか借りるかして手元の現金を増やす。それだけで倒産リスクは抑えられる。

 

では、どれくらいの現金を持てば良いか? 目安は、固定費の6ヵ月分。

 

固定費は、売上の増減に関係なく発生する費用のこと。従業員に払う給料、オフィスや倉庫や工場の家賃、水道代などが固定費に含まれる。厳密にいうと、減価償却費も固定費に含む。ただ、減価償却費は支出ではなく、現金を準備するという話のなかでは関連しないので、省いて良い。

 

一方、借入金の返済は通常は固定費に含めないが、定期的な支出であるので、ここでは固定費に含めよう。これらは会社が営業していなくても発生する。

 

多少の増減はあるとしても(例えば、営業していない時は残業代がなく、人件費が減るなど)、基本的には毎月、ほぼ固定の費用が発生する。

 

それがいくらか計算して、6ヵ月分の現金を持っておく。この現金が用意できれば、なんらかの事情で営業できなくなっても会社は存続できる。

 

営業していないので売上は立たず、利益も出ない。毎月の支払いで貯めておいた現金も減っていく。

 

しかし、払うものをきちんと払っているので、差し押さえられることもなければ潰れることもない。そういう状態さえ整えておけば、6ヵ月以内に営業を再開することによって、再び利益が生み出せる。利益を貯めて、また固定費6ヵ月分の現金を用意すれば、次の危機も乗り越えられる。

 

経営は「一寸先は闇」なので、なにが起きるか分からない。なにが起きても耐えられるように、とにかく資金ショートで潰れるリスクを抑える。それが大事。

 

6ヵ月間「無収入」でも倒産しなかった食品会社

現金を持っておく重要性を知ってもらうために、もう一つ例を挙げよう。

 

群馬県に、まるか食品という会社がある。企業名だとピンとこないかもしれないが、「ペヤングソースやきそば」の会社。まるか食品は2014年12月、「ペヤングソースやきそば」にゴキブリの死骸が混入していたという事件があった。

 

ことの発端はツイッターで、ゴキブリ入りのペヤングソースやきそばがツイッター上に投稿された10日後、まるか食品は本社工場の製品をすべて回収することになった。生産も中止して、異物混入の可能性などを調べた。ただ、混入の原因や経路は分からなかった。

 

この間、スーパーマーケットからもコンビニからもペヤングソースやきそばが消えた。

 

ペヤングソースやきそばの製造と販売を再開したのは、翌年の5月。つまり、6ヵ月間にわたって、まるか食品は主力商品である「ペヤングソースやきそば」の売上を失っていたということ。

 

工場の衛生環境はどうだったか、調査方法はどうだったか、ツイッター投稿者への対応はどうだったかなど、そういったことは脇に置いておく。

 

重要なのは、6ヵ月間もの期間を乗り越えられた理由。

 

答えは簡単。6ヵ月間の無収入期間を耐え抜く現金を用意できていたから。

「製造販売の完全停止」という決断の結果、業績回復

もし現金がなかったら、まるか食品は倒産し、世の中からペヤングソースやきそばが永遠に消えていたかもしれない。

 

「資金がない。売上を確保しなければ」

 

そんなふうに考えて、製造を続けながら調査したり、工場の一部だけ閉鎖して調査していたかもしれないし、生産をストップするにあたり、従業員を辞めさせて人件費を抑えることもできただろう。

 

でも、まるか食品は工場での生産を完全に止めて調査した。この件に関して誰もクビにしていない。結果、消費者の信用を回復できた。

 

6ヵ月後に販売再開した時に、ペヤングソースやきそばは以前と同じように消費者に受け入れられた。業績もそこからV字回復した。すべては、6ヵ月分の現金を事前に持っていた結果なのだ!

 

 

菅原 由一

SMGグループ CEO
SMG菅原経営株式会社 代表取締役
SMG税理士事務所 代表税理士

 

 

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