(※写真はイメージです/PIXTA)

これまでずっと関係が円満だった資産家の一族。子のない叔父が亡くなったことで、相続人の立場となった甥姪ですが、残された叔母に配慮する遺産配分で、円満解決するはずでした。ところが、甥姪のもとに家庭裁判所から分割協議の調停申立書が届き…。一体どういうことでしょうか。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに解説します。

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泣き崩れていたあの叔母が、調停の申し立て…!?

ところがです。福田さんきょうだいのもとへ、ある日突然、家庭裁判所から分割協議の調停申立書が届きました。

 

 

福田さんは驚いて開封すると、そこには叔母と弁護士の名前があり、「叔父の遺産分割協議がまとまらないため、調停を開始する」と記述されていました。これまで円満に話をしてきた叔母の行動とは、にわかには信じられませんでした。

 

福田さんは筆者の事務所で涙をにじませました。

 

「80代の叔母はずっと専業主婦で、愛妻家の叔父に大切にされてきた人なんです。お花のお稽古とお料理が大好きで、おっとりしていて優しくて…。あの叔母が調停に踏み切るなんて、私にはまったく理解できません…」

 

福田さんの兄たちは、これら一連の行動は叔母の判断ではなく、専門家主導のものではないかと考えているそうです。叔母と円満だった福田さんきょうだいは、叔母の行動に驚き、自宅を訪問したそうですが、玄関のドアも明けてもらえないというあまりの対応の差にショックを受けたと話してくれました。

「調停は心情をくみ取るところではありません」

調停が始まり、家庭裁判所で叔母や弁護士と顔を合わせましたが、心の通う会話はできませんでした。福田さんは、思わず、

 

「これでは叔母に気持ちが伝わらないばかりか、叔母の気持ちもくみ取れませんね」

 

と調停員に言ったところ、調停員は福田さんに顔を向けることもなく、

 

「調停は財産の分割を決めるところ。心情をくみ取るところではありません」

 

と冷たく言い放ちました。

 

このやり取りが影響したのか、福田さんはすっかり体調を崩してしまい、一時は歩くことも難しくなってしまいました。その後なんとか回復したものの、調停でのやり取りに悔いが残っているといいます。

 

「調停員の方が大変な業務をしているのは理解できます。ですが、相続人の気持ちにもう少し配慮があれば、どういう結果であれ、納得できるものになったかもしれません…」

 

福田さんは筆者の前で小さくつぶやきました。傷ついた福田さんを目の当たりにして、財産を守ることももちろん大切ですが、感情を置き去りにするようなことがあってはならないと強く感じました。

 

調停によって親族間の関係が壊れてしまったという相談は、あとを絶ちません。なかには、自らのビジネスのため、あるいは嫉妬等の感情のため、動揺している相続人にあれこれ耳打ちする人もいます。「まとまらないから調停だ!」と安易に行動へと移すのではなく、親族同士、多少ぶつかることはあっても解決策を模索していかないと、相続の「本当の終わり」は迎えられないのです。

 

※プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

 

 

曽根 惠子
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士

 

◆相続対策専門士とは?◆

公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。

 

「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。

 

本記事は、株式会社夢相続が運営するサイトに掲載された相談事例を転載・再編集したものです。

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