(※写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「宅森昭吉のエコノミックレポート」の『経済指標解説』を転載したものです。

 

6月分機械受注(除船電民需)は前月比▲1.5%と全体の季節調整値は4ヵ月ぶり減少

 

製造業・前月比+3.6%の3ヵ月連続増加、非製造業・前月比+3.8%と2ヵ月連続増加

 

3ヵ月移動平均2ヵ月連続の増加等で、基調判断「持ち直しの動きがみられる」に据え置き

 

4~6月期は前期比+4.6%と見通し上回る増加率、7~9月期の見通し前期比+11.0%

 

 

●6月分機械受注(除く船舶電力の民需ベース、以下、除船電民需と表記)の前月比は▲1.5%と4ヵ月ぶりの減少になった。但し、3ヵ月移動平均は前月比+2.2%で2ヵ月連続の増加になった。機械受注(除船電民需)の前年同月比は+18.6%で3ヵ月連続の増加になった。

 

●機械受注(除船電民需)の大型案件は、前回5月分では該当なしだったが、今回6月分では、卸売業・小売業の運搬機械1件があった。

 

舞う6月分製造業の前月比は+3.6%と3ヵ月連続の増加だ。6月分の製造業では17業種中、11業種で増加し、減少は6業種だった。工作機械、運搬機械などの、はん用・生産用機械や、電子計算機等といった情報通信機械などが増加に寄与した。

 

●6月分非製造業(除船電民需)の前月比は+3.8%と2ヵ月連続の増加になった。5月分で大型案件がなかった電力業は6月分では火水力原動機1件の大型案件があった。電力業の前月比+17.8%で2ヵ月ぶりの増加となった。6月分の船舶・電力を含む非製造業全体では前月比+6.7%と2ヵ月連続の増加になった。非製造業12業種中、9業種が増加で3業種が減少となった。建設機械、火水力原動機などの建設業や、運搬機械、電子計算機等といった卸売業・小売業などが増加に寄与した。

 

●大型案件は、前回5月分は該当なしであった。今回6月分は全体で3件であった。内訳は民需が前述の電力業、卸売業・小売業の2件、他に外需が1件(鉄道車両)であった。

 

●中小企業の動きを反映している部分がある代理店受注は6月分前月比+3.7%と4ヵ月連続の増加となった。一方、前年同月比は+20.8%と3ヵ月連続の増加になった。

 

●外需は、6月分の前月比が▲10.0%と3ヵ月ぶりの減少になったが、前年同月比は+111.5%で3ヵ月連続の増加になった。

 

●内閣府の基調判断の推移をみると、19年10月分から20年3月分まで半年にわたり「機械受注は、足踏みがみられる」という判断であったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響が大きく出た4月分では「機械受注は、足元は弱含んでいる」という判断に下方修正され、5月分では判断据え置きになった。6月分では「機械受注は、減少している」という判断にさらに下方修正され、7月分では判断据え置きになった。8月分で「機械受注は、下げ止まりつつある」に上方修正され、9月分でも据え置きになった。10月分で「下げ止まっている」に上方修正となったあと、11月分で「持ち直しの動きがみられる」に上方修正、12月分では「持ち直している」に3ヵ月連続で上方修正となった。

 

●21年1月分では「持ち直している」で内閣府の基調判断は据え置きであった。2月分では「持ち直しの動きに足踏みがみられる」に判断が下方修正され、3月分・4月分でも同じ判断だった。前回5月分で「持ち直しの動きがみられる」に上方修正され、今回6月分で据え置きとなった。機械受注(除船電民需)の3ヵ月移動平均が2ヵ月連続増加になったことなどを反映しているようだ。

 

●機械受注(除船電民需)の4~6月期は前期比+4.6%の増加と見通しの+2.5%から上振れた。

 

●機械受注(除船電民需)の7~9月期・前期比実績は09年(平成21年)から昨年までの12年間でみると、上振れ10回、下振れ2回であり、上振れしやすい傾向がある四半期である。7~9月期の見通しは単純集計値に過去3四半期平均の達成率99.1%をかけたものである。7~9月期の前期比見通しの+11.0%を達成するためには、7~9月の各月・前月比が+4.6%以上が必要である。また、各月・前月比が0.0%でも4~6月期の前期比は+1.4%の増加になる。

 

 

●景気ウォッチャー調査の設備投資関連・DIは、20年1月の現状判断DIが52.8(回答数9人)と18年12月分の55.0以来の50超であった。当時の設備投資関連・現状判断DIからは底堅さが感じ取れるようになっていた。しかし、新型コロナウイルスの影響で現状判断DIは4月10.0(同5人)へと急落した。4月を底に多少の上下はあったものの11月は50.0(同13人)まで持ち直した。しかし、その後は新型コロナウイルス感染状況に翻弄されるように、12月は44.4(同9人)、21年1月は39.3(同7人)、2月は37.5(同14人)と低下したあと、3月は47.5(同10人)に戻り、4月は44.4(同9人)、5月は45.0(同5人)、6月は50.0(同7人)、7月は50.0(同7人)に戻っている。7月では前月に続き、「客の設備投資意欲に変化はみられない。」という同じコメントをする景気ウォッチャー(東北・通信会社〔営業担当〕)がいた。

 

 

 

●一方、設備投資関連・先行き判断DIは19年11月には51.8(同16人)と1月以来の50超に戻ったが、そこから下落し、20年4月は18.8(同8人)と弱含んだ。新型コロナウイルスの影響によるところが大きい。4月をボトムに持ち直し、一進一退状態もあったが、9月に45.5(同11人)まで戻した。その後、10月は41.1(同14人)、11月は35.0(同5人)、12月で45.8(同12人)、21年1月64.3(同7人)、2月44.4(同9人)、3月55.6(同9人)、4月46.9(同8人)、5月37.5(同6人)、6月43.8(同4人)、7月43.8(同8人)と推移してきた。7月では「小さい店舗の廃業がみられるものの、全体としては新型コロナウイルスの影響が収まってきている。東京オリンピック後の感染者数が今後の景気を左右しそうである。製造業における設備投資については上向きな声が聞こえる。(東北・職業安定所〔職員〕)」というコメントがあった。

 

●日本工作機械工業会によると、7月分速報値の工作機械の国内向け受注額の前年同月比は+75.3%と、3月分+18.2%、4月分+70.6%、5月分+82.6%、6月分+91.1%に続き、5ヵ月連続の増加になった。新型コロナウイルスの影響が出ていた前年の反動の影響が大きいが、生産設備需要が増加しつつある面もあるようだ。機械受注統計での民需からの工作機械受注も同様の動きになっている。6月分の前年同月比+77.2%と、3月分+17.0%、4月分+71.4%、5月分+85.6%に続き4ヵ月連続の増加である。7月分も高めの伸び率が予測される。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2021年6月分「機械受注」のデータ』を参照)。

 

(2021年8月18日)

 

宅森 昭吉

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

理事・チーフエコノミスト

 

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