(※写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、東海東京調査センターの中村貴司シニアストラテジスト(オルタナティブ投資戦略担当)への取材レポートです。今回は、リスクやリターンの要因を説明する「ファクター」を、ヘッジファンドがどのようにポートフォリオ管理に活かしているのかを見ていきます。

「ファクター分析」で、どのリスクが大きいかがわかる

「ファクター」とは、個別資産や個別銘柄のリスクやリターンの要因を説明する共通の特性を指す。代表的な株式のファクターとして、バリュー、サイズ、モメンタム、ボラティリティ等が挙げられよう。

 

ヘッジファンドのポートフォリオ管理の手法は多様だが、その一つに、ファクターに基づくポートフォリオ管理が挙げられる。たとえば、ポートフォリオにおいて「株式」を30%、「債券」を70%、組み入れていたとする。

 

70%の債券部分では、国内、海外(先進国、新興国)の債券両方に投資し、投資対象のなかには政府系の発行体や個別民間企業の社債が含まれていたとする。また、海外債券には石炭や原油など化石燃料に関わる政府・民間企業の債券や低格付けのハイクーポン債が含まれる一方、国内債券にはグリーンボンド債券が入っていたと仮定しよう。

 

そのような場合、ファクター分析では、「国内金利ファクター+海外金利(先進国、新興国)ファクター+為替(先進国、新興国)ファクター+国内クレジットファクター+海外クレジットファクター+ハイイールドファクター+コモディティファクター+国内ESGファクター+海外ESGファクター+その他ファクター」などに分解できる(実務上はさらに細分化できるが、ここでは簡易版を提示)。

 

そして、ファクターの細分化を行うことで、債券投資において金利リスクや為替リスクに加え、発行体のクレジットリスク(信用リスク)やESGリスクなどを負っていることがわかる。仮に、残り30%の株式内にこれらのファクターの影響を受ける部分(リスク)がある場合、ポートフォリオ全体として、リスク・リターンや相関などに基づく純粋な債券と株式の資産分散効果が低減してしまう可能性がある。

 

分散投資を考える上で、資産分散効果によるリスク低減だけでなく、ポートフォリオとしてどのようなファクターにウェイトを置き、全体としてどのようにファクターの分散をしているかを把握することがポートフォリオのリスク管理においては重要だろう。

 

以上のような観点から、ファクターの感応度、ファクターの期待リターン、リスク、相関を活用した上で各ファクターのリスク寄与度やリターン寄与度を算出し、ヘッジファンド戦略のポートフォリオの組み合わせをシミュレーションすることで、アセットアロケーションやリバランスに活かすことも一つの方法だと考える。

 

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このレポートは、投資判断の参考となる情報の提供を目的としたもので、投資勧誘を目的としたものではありません。投資判断の最終決定は、お客様自身の判断でなさるようお願いいたします。このレポートは、信頼できると考えられる情報に基づいて作成されていますが、東海東京調査センターおよび東海東京証券は、その正確性及び完全性に関して責任を負うものではありません。なお、このレポートに記載された意見は、作成日における判断です。

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