「ヘッジファンド」で相場急変に備える投資家が増加
世界でヘッジファンド投資は拡大の一途を辿っている。リーマンショック時にはマーケットの暴落と解約増加の動きなどから運用残高が急減する場面も見られたが、その後は一貫して拡大基調を辿り、2021年6月末時点のヘッジファンドの運用残高は3兆9600億ドルまで拡大し、過去最高を更新した(米ヘッジファンド・リサーチ調べ)。
コロナショック後にV字回復を果たし、2021年8月に入ってからも史上最高値を更新する米国株式市場であるが、今後も一進一退ながらも新興国を含めたワクチン接種の広がりにより、世界経済の正常化の進展が期待される。一方、FRB(米連邦準備制度理事会)によるテーパリング(量的緩和の縮小)やそれに伴う米長期金利の上昇圧力および覇権争いとしての米中の対立激化など難しい相場局面に入っていくことが予想される。
いつかは暴落などの動きが来るかもしれないが、ピンポイントでそのタイミングを計ることが難しい。だからこそ、ポートフォリオの一部にヘッジファンドを組み入れることで、相場の急変への効果的な対応を図ろうとする投資家が増加していると言えよう。
日本の機関投資家が抱えている「ジレンマ」とは?
日本の投資家(特に機関投資家)においては、伝統的ファイナンス理論(モダンポートフォリオ理論、CAPM等)に基づくファンダメンタルズ分析が幅を利かせており、ヘッジファンドのようなオルタナティブ運用はどちらかというと、"危険なもの"、"怪しいもの"として回避される傾向があった。
しかし、ITバブルとその崩壊やリーマンショックなどの数々の荒波に遭遇し、通常のリスクリターンやフェアバリューを超えた非合理的な動きやアノマリー※に十分に対応しきれなかった反省・教訓を踏まえ、オルタナティブ投資の一部としてポートフォリオにヘッジファンドおよびその戦略を取り入れる動きが広がった。
※アノマリー:伝統的なファイナンス理論では説明がつかない、経験則的な動きのこと
日本の機関投資家においては、3~5年、または10年以上の期間を見据えた「中長期投資の必要性」が謳われているものの、実際の投信、年金の運用現場においては、概ね1ヵ月~3ヵ月、または半年~1年程度の「短期の成績」が評価され、同時に足元の市場環境や投資行動の詳細な説明を顧客、販売会社、委託者から求められることが多い。
このような外部のモニタリングのプレッシャーなどから、実質的には短期成績を重視した運用を行わざるを得ないファンドマネージャーやポートフォリオマネージャーは、数ヵ月単位でファンダメンタルズを超えた動き、たとえば、20%~30%以上、合理的な水準(フェアバリュー)から大きく市場が上下に振れた場合、通常のファンダメンタルズアプローチでは手足を縛られ、成績を悪化させてしまうリスクが高まる。
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