(※写真はイメージです/PIXTA)

情報通信技術の進化により、今やどこの土地にいても仕事をもらえる環境になりました。海外の仕事を行う場合、かつては外国に工場やオフィスを移転しなければ現地の仕事がもらえなかった時代に比べれば一見、労働者にとって便利な時代になったようにも思うでしょう。しかし「働く場所が関係なくなった」という事実がどんなリスクをもたらすのか、ご存じでしょうか。※本記事は、谷本真由美氏の著書『日本人が知らない世界標準の働き方』(PHP研究所)より一部を抜粋・再編集したものです。

正社員でも「突然クビになる時代」へ突入

このように、働く場所が関係なくなっているので、先進国の企業では、わざわざ社員を抱える必要が薄れています。多くの組織では、ごく一部の、意思決定をする幹部や、「富を生み出す仕組み」を考える人だけを残し、あとは、短期的に雇用したり、海外の人を雇う、という傾向が高まっています。必要な人材は置いておき、景気の動向により、部署ごとレイオフしたり、海外に移動したりしてしまうのです。

 

図表3は、OECDによる1980年代中頃から2000年代中頃の主要国の労働時間の推移を調査した結果です。低収入層は労働時間が減っている国が大半です。先進国では低収入層の仕事が合理化されたり、海外に移転してしまったりしたため、労働時間が減っています。

 

参照:http://www.oecd.org/social/soc/47723414.pdf
[図表3]年間労働時間の比較 参照:http://www.oecd.org/social/soc/47723414.pdf

 

かつては、オフィスでの情報共有や、仕事の管理が難しかったので、部署ごと海外に移転、という事例は多くはありませんでしたが、情報通信技術の発達で、かなり簡単になったので、思い切る組織が増えてきたのです。

 

それを裏づけるのは、先進国における、非正規雇用の増大です。先進国では付加価値の低い仕事が国内から消えるか、コストを削減するために非正規雇用などに置き換えているため、トップ層以外の賃金が下がっています。さらに、OECD加盟国では1990年代半ばから2000年代後半にかけて非正規雇用の割合が11%から16%に増加しています。

 

これは、情報通信技術が発達し、金融やIT産業が以前にも増して盛り上がってきた時期と重なります。非正規雇用が増えているのはなにも日本だけの話ではないわけです。

 

つまり、正社員であっても、ある日突然クビになったり、部署ごと海外に移転してしまったりする可能性があるため、その地位は決して安定していないということです。正社員はかつては、自営業者などに比べると莫大な収入を得られることが少なく、ローリターンである一方ノーリスクでしたが、今では、正社員であっても、地位が安定しているとはいえないのです。

 

 

谷本 真由美

公認情報システム監査人(CISA)

 

 

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日本人が知らない世界標準の働き方

日本人が知らない世界標準の働き方

谷本 真由美

PHP研究所

「働き方」にこれほど悩むのは日本人だけ⁉ 好評ロングセラー、『日本人の働き方の9割がヤバい件について』を大幅に加筆してアップデート! 日本、イギリス、アメリカ、イタリアの現地組織での就労経験を持つ著者が、海…

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