世界中で「貧富の差」が拡大した3つの理由
OECDが2011年に発表した「Growing Income Inequality in OECD Countries: What Drives it and How Can Policy Tackle it?」では、世界的な貧富の差の拡大と、働き方の変化には、強い相関性があるとされています。
貧富の差が拡大したのは、
「グローバリゼーション、技術の進展、規制や構造改革が収入の再配分に影響を与えた」
「家族の形態の変化が各家計の収入に影響」
「税や社会保障の仕組みの変化」
の3つが引き金であるとされています。
最初の「グローバリゼーション」は、「投資や貿易を通して国内外の市場が統一されたため、国内外の働く人に影響があった」ということです。先進国から新興国に仕事を発注することや、新興国からもっと安いものやサービスを買いやすくなったことから、先進国の給料の高い人材や労働力が必要なくなったのです。さらに、情報通信などの技術が発達するので、ものやサービスのやり取りが簡単になりました。
世界的な規制緩和の波も、グローバリゼーションに関係があります。外国と取引するのに規制がゆるくなる国が増えたので、前に比べると取引も容易になり、新興国に仕事を依頼することや、ものやサービスを買うことが容易になったのです。
1980年には加盟諸国で海外直接投資は5%に満たなかったのが、2000年代後半になると50%近くになっています。多国籍企業の海外事業が拡大し、付加価値の低い仕事が海外に外注されるようになったわけです。規制の改革には金融の規制も含むので、機関投資家や個人投資家は、株、不動産、投資信託などの金融商品で儲けやすくなりました。
先進国では投資や貿易を通して国内外の市場が統一されると、国内の働く人の収入差が広がります。つまり、海外に仕事を外注して、海外や国内で売る人は儲かるようになり、それ以外の人は賃金が下がってしまうというわけです。これはまさに海外市場に依存している日本企業は好調なのに、国内市場に依存している企業は厳しい状況なのと一致します。
「福祉や税金の仕組み」が発展に追いついていない?
「家族の形態の変化が各家計の収入に影響」も重要な指摘です。かつては多くの国で、夫婦と子供という家族構成では、夫は外で働いて妻は家庭を守るという「伝統的な家族の形」が基本形であり、福祉や税金の仕組みは、それに沿って設計されていたのですが、多様な働き方、多彩な家族形態が増えてきたために、現状に合わなくなってきたということです。
例えばイギリスでは、約半分の家庭で女性が稼ぎ手です。フランスでは事実婚のカップルが珍しくありません。2回も3回も結婚する人もいます。北米や欧州だと、代理母経由で子供をもうける同性カップルもいます。
そのような家族の変化に合わせて、多くの国では、夫婦と子供、という形態に対して社会保障を提供するのではなく、個人ベースで社会福祉手当を提供したり、扶養家族控除をなくすなど、「社会福祉の個人化」が進みました。それと同時に、社会福祉全体が削減され、生活の質は、個人の努力次第という傾向が強まっています。
日本でも配偶者控除や福祉手当の削減が話題になっていますが、「税や社会保障の仕組みの変化」は日本だけの話ではなく、他の国でも起こっていることです。