先進国では「製造業の仕事」が急速に減少中
仕事をする場所が関係なくなっている、という傾向は、先進国から製造業の仕事が急速に減っていることからも裏づけられます。
例えば、イギリスのビジネス・イノベーションおよび技能省(BIS〈2016年に廃止〉)によれば、製造業は1990年にGDPの22%を生み出していましたが、2014年には11%に低下しています。アメリカとフランスもほぼ似たようなレベルで、製造業の生み出す付加価値の割合は下がっています。製造業が強いはずのドイツや日本でもやはり割合は下がっています(図表1)。
一方で、中国では、1990年には35.5%だったのが、2008年には42.7%に上昇しています。同省はこの変化を、製造業では多くの仕事が海外の新興国に外注され、さらに情報通信技術の発達により、サービス業に比べて、製造業の生み出す製品の値段が急落したことが原因だとしています。
製造業が生み出す付加価値が減っている国では、1990年以後、製造業における雇用も減っています(図表2)。
イギリスでは1990年に510万人が雇用されていたのが、2008年には310万人までに減少しています。この減少は、アメリカ、日本、ドイツの方が大きいというのも注目すべき点です。
また、製造業の仕事においても、企画やマーケティングなどのサポート業務の仕事は増えていますが、製造管理や、生産エンジニアの仕事は減っている上に、賃金も下がっているのです。つまり、バリューチェーンの下層部にあり、付加価値の少ない仕事は、製造業のうちでも、海外に出してしまう傾向が高くなっています。製造業の仕事が減少した国では、その一方で、サービス業や金融による富が増えています。