※写真はイメージです/PIXTA

「後継者不足」は、中小企業にとって深刻な問題です。後継者不足の背景には少子化などの影響はもちろん、税金を含めた承継コストが高く、承継しづらいことも一因です。そこで今回、一定の条件のもとで自社株式の贈与または相続に対する納税が猶予および免除される「事業承継税制」について、詳しくみていきます。

「一世代分の移転コスト」を省けるありがたい措置

事業承継税制(特例措置)の適用を受けると、次のようなメリットがあります。

 

①会社の事業継続を前提に、先代経営者(親)から後継者(子)に自社株式を贈与または相続で移転した場合は、贈与税または相続税が「猶予」されます。

 

なお、贈与の場合は、先代経営者の死亡までとなりますが、相続税の納税猶予に切り替えて引き続き猶予を続けることができます。

 

②将来、さらに次の後継者(孫)に事業承継をして株式を移転した場合は、猶予されていた税金が「免除」されます(最終的に支払わなくてよい)。

 

ここで、次の後継者(孫)が贈与または相続で承継した株式への課税が免除になるのではないことに注意してください。免除になるのは、あくまで後継者(子)が猶予されていた税金だけです。

 

つまり、会社を何世代にもわたって承継していく場合、事業承継が生じる度に株式の移転コストがかかりますが、事業承継税制を使うことで「一世代分の移転コストを省く」ことができるというイメージです。

 

もちろん、この制度が存在する期間内に、子から孫への事業承継が行われ、そのときにもこの制度を利用できれば、孫が払うべき自社株式についての贈与税または相続税も猶予されます。

 

なお、ここでは世代交代のイメージを分かりやすくするため「先代経営者が親、後継者が子、次の後継者が孫」の形で説明しています。しかし、事業承継税制は、従業員など、親族以外の人が後継者となって事業承継する場合でも利用できます。

 

さて、事業承継税制を適用して税金を猶予された後継者(子)に相続が発生すると、その税金は免除されるわけですが、次の事業承継(孫への株式の移転)を実施する前に、会社を廃業やM&Aをしてしまった場合や、後継者が死亡してしまった場合に、猶予されていた税金はどうなるのでしょうか?

 

これらの場合の扱いは、事業継続期間中(贈与税または相続税の申告期限から5年間)なのか、その後かによって変わります。事業継続期間中のM&Aや会社の解散などであれば、原則として納税が猶予されている税金の全額と利子税をあわせて納付しなければなりません。

 

また、事業継続期間後でも、M&Aで会社を売却した場合は原則として同様です。ただし、事業継続期間後に「事業の継続が困難な事由」で譲渡や会社の解散をする場合は、その時点の株価で税額が再計算され、事業承継時の税額より低い場合は、その差額部分は免除されます。

 

 

税理士法人 チェスター

 

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