在宅療養で家族関係悪化…医師が見た、80代男性の険しい表情 ※画像はイメージです/PIXTA

在宅療養で家族と過ごす時間が増えると、関係が悪化してしまう場合があります。ここでは事例とともに、うまくいかないときの処方箋について在宅療養支援クリニック かえでの風 たま・かわさき院長、宮本謙一氏が解説します。

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「ほっといてくれ」在宅療養で家族関係が悪化した例

在宅療養の開始に伴い、家族と過ごす時間が増える方がほとんどです。介護休暇を取って家族の介護に専念する方も増えています。一緒に過ごす時間が増えることで、家族との仲が良くなる場合もあれば、逆に険悪になることもあります。

 

裸一貫から会社を立ち上げて大きく育て、仕事を引退して息子さんに引き継いだ糖尿病の患者さん(80代前半の男性)がいました。

 

ストレスが溜まるとアルコールに依存してしまい、アルコールの副作用で膵臓の働きが悪化、膵臓から分泌されるインスリンの量が減少し、ますます糖尿病が悪化していました。さらに食生活が乱れ、インスリンを打ち間違えることも増え、高血糖、低血糖による意識障害のため病院に救急搬送されることを繰り返していました。

 

在宅療養がうまくいかないため、ケアマネジャーを中心に、主治医である私、訪問看護師、そして家族がそろい、患者さんを囲んで在宅療養について検討する「サービス担当者会議」が開催されました。

 

出席した全員が、患者さんの体のことを心配していることを話して、少しでも生活を改善して体調を安定させることができるよう、考えられる限りのさまざまな提案を行いましたが、患者さんの表情は険しくなるばかりです。

 

最後に息子さんから、いかに患者さんのことを心配しているか、聞いている私たちも心を打たれるような温かいメッセージが伝えられました。さすがに患者さんも心を打たれるかと思ったのですが、実際にはまったくの逆効果で、「俺は誰の言うことも聞かない。ほっといてくれ」と臍を曲げてしまいました。

 

結局、それ以降も患者さんと家族の関係は改善せず、患者さんの意識を変える良い方法は見つからないまま、病状は悪化の一途をたどり、糖尿病の合併症である足壊疽(えそ)のため長期入院となり、そのまま自宅に戻ることはできなくなりました。

 

この患者さんの場合は、家族との関係性だけではなく、会社の創業者としてのプライドや、後継者である息子さんに対するわだかまりがあり、関係性がうまくいかなかったのだと思います。このように、家族や私たちがいくら努力しても、家族関係の改善が難しく、在宅療養が困難となるケースもあります。

 

この事例のように、家族関係が最期までまったく改善しないケースはごく一部です。実際には、在宅療養とその介護を通じて、大方の患者さんの家族関係は良くなると思います。

 

たとえば、離婚や別居により家族関係が冷え切ってしまい、介護の面でとても心配していた患者さんの家族が、在宅療養とその介護を通じて強い絆を取り戻し、自宅で幸せな最期を迎えるといったケースを、私は何例か経験しています。

在宅療養支援クリニック かえでの風 たま・かわさき 院長 医学博士

奈良県立医科大学卒業後、同大学の医局「第2内科」に入局。

第2内科の専門は喘息、肺気腫などの慢性呼吸不全、肺がんなどの呼吸器疾患、感染症、白血病など。病棟にて多くの患者の「緩和ケア」や「看取り」を経験。

誰もがいつかは「死」を迎えるという当たり前の事実に対して医師として何ができるかを考え、医師になって7年後に公衆衛生医師となる。

治らない病気をその手前で食い止めること、すなわち病気の予防に力を入れる。具体的には結核や新型インフルエンザなどの感染症対策、小児救急医療や周産期医療に関連する児童虐待対策、がん対策や生活習慣病対策などに従事。

2011年3月、東日本大震災の被災地の自治体や保健所に長期間派遣されたことを機に、もう一度、現場の医師として歩むことを決意。

その後、在宅医療の現場にたどり着くなかで「笑いヨガ」と出会い、「笑い」を在宅医療に取り入れる活動を行っている。がんや認知症を含めさまざまな疾患のある方に、在宅で穏やかに、楽しく過ごしてもらうことがモットー。

著者紹介

連載在宅医療を楽しみ、たくさん笑って過ごすために

※本連載は、宮本謙一氏の著書『在宅医療と「笑い」』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

在宅医療と「笑い」

在宅医療と「笑い」

宮本 謙一

幻冬舎メディアコンサルティング

在宅医療は、通院が難しい高齢の慢性疾患の患者さんや、がんの終末期の患者さんなどが、自宅で定期的に丁寧な診察を受けられる便利な制度です。 メリットは大きいのですが、うまくいかないときもあります。 医師や看護師…

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