※画像はイメージです/PIXTA

病気という苦痛の種を抱えた「在宅療養」生活、いつも笑顔でいることは簡単なことではありません。しかし、明るく前向きな行動は、病状に変化をもたらすことがあります。在宅療養支援クリニック かえでの風 たま・かわさき院長の宮本謙一氏が実際に診た、80代女性・50代男性の2つの事例について解説していきます。

慢性閉塞性肺疾患(COPD)の患者Bさん(80代女性)

私は、どんなに重い病状の方でも人生を楽しむことは可能であり、楽しむことで自然と笑いが溢れる素敵な在宅療養生活を送ることができると信じています。

 

私が訪問診療していた慢性閉塞性肺疾患(COPD)の患者Bさん(80代の女性)のケースを紹介します。

 

COPDはゆっくりと進行していく病気で、簡単にいうと肺が「ボロボロ」になっていき、ちょっと動いただけでも息切れがひどく、在宅酸素療法を導入して常時酸素を吸っていてもだんだん動けなくなっていきます。

 

動けないので食欲も低下し、また呼吸をするのが大変でどんどんエネルギーを消費するため、次第に痩せていきます。痩せて筋力が低下すると、ますます呼吸が苦しくなります。このように悪循環に陥っていくのがこの病気の怖いところです。

 

そして、呼吸の予備力(ゆとり)がないため、ちょっと風邪をこじらせただけでも命取りになります。

 

Bさんも著しく痩せて、息切れもひどく、家の中で歩くのも大変な状態になっていました。常に息切れするような状態だと、多くの方は生きること自体が嫌になり、うつ状態に陥ります。Bさんも、心身ともに日に日に元気がなくなっていきました。

 

晩秋の頃、Bさんから相談を受けました。来年の春に約1ヵ月間、旦那さんと一緒に、日本から周辺の国を巡る豪華客船のクルージングに行きたい、とのことでした。

 

正直にいって、Bさんは、病状的には「この冬を乗り切れるかどうか五分五分」といった状況でした。私は医師として許可するべきかどうか少し悩みましたが、旅行を楽しみにしているキラキラした目の患者さんを見て、すぐに迷いは吹き飛びました。「楽しくクルージングに行けるよう、この冬を元気に乗り越えましょう!」と即答し、その日から準備が始まりました。

 

Bさんや旦那さんが、すぐに旅行会社や在宅酸素の会社に連絡を取って必要な手続きを確認し、私が英文の診断書を作成するなどの必要な手続きを行いました。来年春のクルージングが目標となった瞬間から、明らかにBさんは元気を取り戻しました。

次ページ結局、クルージングは…

※本連載は、宮本謙一氏の著書『在宅医療と「笑い」』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

在宅医療と「笑い」

在宅医療と「笑い」

宮本 謙一

幻冬舎メディアコンサルティング

在宅医療は、通院が難しい高齢の慢性疾患の患者さんや、がんの終末期の患者さんなどが、自宅で定期的に丁寧な診察を受けられる便利な制度です。 メリットは大きいのですが、うまくいかないときもあります。 医師や看護師…

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