「ひざがおかしい…」は即受診すべきサイン
変形性膝関節症は、関節軟骨がすり減っていく度合いと症状から初期・進行期・末期の3段階に分類されます。初期の状態ではひざのこわばり程度しか感じませんので、特に気に留めることはなく忘れてしまうことが多いようです。あとで振り返ると、「そういえば…」と気づくこともありますが、特に意識せずに過ぎてしまうことが少なくありません。
その後、ゆっくりと病状が進行していき、何年か経って明らかな症状が現れて初めて受診するケースがほとんどです。
逆にいえば、ひざに違和感をもった初期の段階で発見し、適切な治療を受けることでひざ寿命を延ばせるともいえます。「ひざがおかしい」と感じたときには、整形外科専門医を受診することをお勧めします。
ひざの「こわばり」や「違和感」は初期症状の疑い
〈初期の状態〉
軟骨がすり減り始め、昔と比べてひざが伸びにくい、曲がりにくいという膝関節の可動域の制限や、ひざに力が入りにくいといった筋力低下を感じることがあります。
可動域とは関節の構造から動かせる範囲のことで、すべての関節には限界があります。膝関節の場合は、まっすぐ伸ばした状態を0度すると、正座などのひざを深く曲げ切ったときの角度である150~155度までが限界です。変形性膝関節症になると、この可動域がどんどん狭くなっていきます。
日常動作では、歩いたり立ち上がったりと、ひざに力がかかる動きをするとひざに違和感があったり、痛みを感じることがあります。しかし、すぐに治まるので気にする人は少なく、見過ごしてしまいがちです。
⇒主な症状:朝起きたときにひざがこわばる、歩き始めが痛い、正座すると違和感があるなど。
「階段が辛い」「ひざが重くてだるい」は進行期
〈進行期の状態〉
軟骨のすり減りが進み、削り取れた軟骨のかけらが滑膜を刺激して炎症が起こります。そのため、はっきりとした痛みを自覚し、初期の頃とは違って痛みが強かったり、ちょっと休んでも痛みが治まらないようになります。また、ひざが腫れたり熱をもったり、軟骨の表面に凹凸ができて摩擦が大きくなるので歩くと関節がきしむような音がしたりします。
炎症がひどいときは、ひざに水が溜まることもあります。これが痛みの直接の原因ではありませんが、ひざが重だるく感じる場合もあります。
関節の隙間も狭くなって変形し、O脚やX脚の状態になることで、見た目にも変形性膝関節症と分かるようになってきます。日本人の場合はO脚になる傾向があり、軟骨の内側からすり減りが進むケースが多く見られます。膝関節の可動域の制限と筋力低下も進行し、ひざが完全に伸びなくなったり、立ち上がるときに難儀したりします。この時期にはひざが外側にぶれるような歩行の現象が見られることもあります。
⇒主な症状:階段の上り下りが痛い、足の曲げ伸ばしがつらい、ひざに水が溜まるなど。
末期になると「じっとしても痛い」…日常生活が困難に
〈末期の状態〉
軟骨がほとんどすり減ってなくなり、関節の隙間がレントゲン上で見られなくなります。そのため、上下の骨がぶつかり、すり減ることで強い痛みを感じます。
軟骨には再生能力がありませんが、骨には再生能力があるのですり減った骨を再生しようとします。しかし、上からは常に荷重がかかっていますから同じ部分で復元することができず、横にはみ出す形で骨がとげのように増殖してしまいます。これを骨棘と呼びます。この骨棘が滑膜を刺激し、痛みがいっそう強くなります。この時期になると、ひざに水が溜まらなくなる人もいます。
膝関節の可動域の制限がさらに進行し、ひざをほとんど動かせなくなり、日常動作の大半ができなくなります。この状態になると、半月板や靭帯が損傷しているケースも少なくありません。そのため、歩く際には杖が必要になることもあります。
また、外出をしなくなり、家にこもっていることで気持ちが落ち込み、うつ状態になりがちです。高齢者の場合は、外界からの刺激が少なくなるために認知症を発症するケースも見られます。
⇒主な症状:平地の歩行も痛い、じっとしていても痛い、痛みで眠れないなど。
変形性膝関節症は、このような経過をたどって進行していきます。日常生活に支障が生じる前に医療機関を受診することが重要です。
松田 芳和
まつだ整形外科クリニック 院長
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