(※写真はイメージです/PIXTA)

膝に違和感がある。正座しづらくなった。曲げたり伸ばしたりすると、ポキポキと音が鳴る…。そんな症状はありませんか? もしかしたらそれは「変形性膝関節症」の初期症状かもしれません。潜在患者は約3000万人。進行するまで気づきにくい一方で、進行すれば歩行困難になり、寝たきりの生活を余儀なくされる恐れもある怖い病気です。早期発見が望ましい「変形性膝関節症」について見ていきましょう。

ひざがポキポキ…は「変形性膝関節症」の予備軍

「変形性膝関節症」は、ひざの軟骨がすり減って関節が変形する病気の代表格です。50代以降の女性に多く、潜在患者は約3000万人といわれています。

 

なぜ潜在患者が多いのかというと、関節軟骨には血管だけではなく、神経も通っていないため、ダメージを受けても痛みを感じないので症状に気づけないからです。

 

健康な軟骨の表面は非常に滑らかでスベスベしており、軟骨どうしがこすれ合ったとしても、そう簡単にすり減ることはありません。しかし、ひざは1日に数千回も動かしているといわれるほど、日常動作のなかでも特によく動かす部分です。しかも、関節軟骨は再生しない組織ですから、車のタイヤがすり減るように、加齢とともにひざの関節軟骨も少しずつ摩耗していくことは避けられません。

 

ふつうに生活していてもひざには負荷がかかっているというのに、体重の増加や無理な運動などが加わることで、さらに軟骨の摩耗に拍車がかかるのは想像に難くないことです。

 

スベスベして弾力のあった軟骨は、年を重ねると肌と同じように水分や栄養が足りなくなって潤いが失われていきます。滑らかだった表面は、しだいにカサカサして毛羽立つようになります。これによって摩擦が大きくなることで、軟骨が削り取られるようになるのです。このような状態になるまでには、何年もの長い時間を要します。

 

しかし、軟骨には痛みを感じる神経も通っていませんから、自覚症状がないのです。本人の気づかないところでゆっくりと進行していき、50歳前後になってようやくひざ痛などの自覚できる症状として現れてきます。つまり、軟骨がある程度すり減ったあとに、痛みや腫れといった症状が現れるということです。したがって、自覚するようになった頃には、ひざの状態がかなり悪化しているといわざるを得ません。

 

しかし、患者さんたちの話をうかがっていると、実際にはそれ以前からひざの違和感や曲げ伸ばしの際にポキポキと音がした、正座がしづらくなったなど、なんらかの兆候が現れているケースが多いのです。それを「年のせいだから仕方ない」と諦めていたり気に留めていなかったり、気づいていても我慢して過ごしていた結果、ある日を境に痛みを抱え込むようになっています。ですから、これらの人たちは変形性膝関節症の予備軍といえるでしょう。

 

軟骨が「膝関節を包む膜」を傷つけた結果、痛みを生む

痛みはひざに限らず、体の異変や異常を知らせるサインです。もしも痛みがなければ、私たちは体の異変に気づくことができずつい無理をしたり、いつも通りの生活を続けたりして病気を進行させてしまいます。

 

ひざの関節軟骨には神経が通っていませんので、すり減っても痛みは出ないはずですが、摩耗が進んでくると削り取られた軟骨のかけらが、関節液(関節の動きを滑らかにし、摩擦が起きないようにする潤滑油)に混じって関節包(膝関節を包む膜)の中を漂うようになります。すると、軟骨のかけらが滑膜を刺激して傷つけ、炎症を引き起こすのです。炎症は、体が有害な刺激を受けたときに、それを取り除こうとして起こる防御反応でもあります。

 

炎症を起こした滑膜によって、さまざまな炎症性サイトカインが産生され、関節内に放出されます。これらの炎症性サイトカインは痛みを感じる侵害受容器を活性化させるだけでなく、軟骨細胞の変性も引き起こし痛みの原因になっています。

 

サイトカインは細胞どうしの情報伝達を担っている物質で、免疫に関わっているリンパ球などの細胞から数種類のサイトカインが放出されています。そして、サイトカインには炎症を促進する炎症性サイトカインと、炎症を抑制する抗炎症性サイトカインがあり、両者のバランスが取れていれば免疫は正常に働き、炎症も治まって健康が保たれます。

 

例えば、慢性的な炎症が体内で起きているボヤだとすると、炎症性サイトカインはボヤの勢いを強めることで周りにこの異常事態を知らせます。このときに炎症が起こり、赤く腫れたり痛みを発したりします。そして、駆けつけた抗炎症性サイトカインによって沈静化されるしくみです。炎症を治すためには必要なプロセスですが、炎症性サイトカインと抗炎症性サイトカインのバランスが悪いと炎症を慢性化させ、痛みは続くこととなります。

 

痛みが痛みを呼び、炎症がさらに悪化するという悪循環

痛みは、それ自体が私たちにとって大きなストレスです。精神的にも落ち込むなど別の病気を引き起こし、痛みをさらに複雑化させてしまうことがあります。

 

ストレスを感じると筋肉が緊張し、血管も収縮して血行が悪くなりますが、これには自律神経が関係しています。自律神経は自分の意思ではコントロールできない神経で、私たちが起きていても寝ていても無意識の状態でも、体温や呼吸、心拍、発汗、血圧、内臓の働きなどを常に良い状態に保っています。一年を通して体温が一定に保たれているのも自律神経によるものなのです。

 

自律神経は、交感神経と副交感神経の2種類からなっています。交感神経は体を活発に働かせる方向に働き、副交感神経は逆に体を休ませる方向に働いています。日中は主に活動モードの交感神経が優位になり、適度な緊張状態をつくってやる気を起こさせます。夜間はリラックスモードの副交感神経が優位になり、日中の緊張を緩めて休息を促すというように体の機能を調整しています。

 

こうして自律して働いているので自律神経と呼ばれていますが、ストレスに弱くバランスを崩して免疫力を低下させ、病気の発症を招く要因にもなります。ですから痛みというストレスにも反応し、交感神経を優位にして体を緊張状態にしてしまいます。そのため、筋肉が緊張し、血管も収縮して血流が悪くなるわけです。

 

血行が悪くなると、軟骨のかけらや炎症性サイトカインを含んだ関節液が回収されないまま増え続けることになりかねません。これにより痛みが痛みを呼び、炎症がさらに悪化していくという悪循環に陥ってしまいます。

 

松田 芳和

まつだ整形外科クリニック 院長

 

 

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※本連載は、松田芳和氏の著書『ひざ革命 最期まで元気な歩行を可能にする再生医療』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

ひざ革命 最期まで元気な歩行を可能にする再生医療

ひざ革命 最期まで元気な歩行を可能にする再生医療

松田 芳和

幻冬舎メディアコンサルティング

ひざ痛の予防から再生医療まで。 人生100年時代を豊かに生きるための「ひざ寿命」の延ばし方を徹底解説。 昨今、「健康寿命」の重要性が問われています。 人生100年時代といわれて久しいですが、その生活の質を左右す…

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