ひざがガクッとする、ゴリゴリ鳴る…「ひざの違和感」を放置した人に待ち受ける恐ろしい事態 (※写真はイメージです/PIXTA)

40歳を超えた頃から、徐々にひざの痛みを訴える人が増えてきます。ひざの痛みというと「年齢のせい」と思われがちですが、実は若い人でも発症リスクがあることや、若い頃のひざの状態によって将来の発症リスクが変わることをご存じでしょうか。ひざ痛は、進行すれば歩行困難になり、寝たきりの生活を余儀なくされるリスクもある恐ろしい症状です。寝たきりの老後を回避するために知っておきたい「ひざ疾患」について見ていきましょう。

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若い頃「ひざをケガした人」は、ひざ疾患のリスク増大

ひざ痛を生じる病気はいくつかありますが、最も多いのは「変形性膝関節症」です。変形性膝関節症は加齢や生活習慣などによる自然現象ともいえますが、スポーツなどでひざを酷使して膝関節を損傷する病気もあります。スポーツによる障害で最も多いのは、半月板損傷や靭帯損傷などのひざ疾患です。

 

若い頃に半月板や靭帯を痛めてしまうと【図表参照】、そのときは治ったとしても中高年以降に変形性膝関節症を起こしやすくなるなど影響が出てきます。

 

【図表】健康な膝関節

 

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ひざがガクッとする、ゴリゴリ鳴る…は半月板の損傷

<半月板損傷>

膝関節を上から見ると内側と外側に、C字型をした半月板が2つ並んでいます。C字型の中央付近は薄く、外周部にいくにつれて厚くなっていることで、ひざにかかる衝撃が1ヵ所に集中しないように荷重が分散され、膝関節の負担を軽減するクッションの役割を果たしています。また、ひざの動きをコントロールするなど重要な働きをしています。

 

スポーツなどでジャンプをしたりひざを捻(ひね)ったりして、半月板に大きな衝撃が加わると、半月板に亀裂が入ったり、切れて関節に挟まってしまうことがあります。これが半月板損傷です。サッカーやバスケットボール、バレーボール、体操、柔道、陸上などの選手に多く見られる障害です。

 

半月板が損傷すると、ひざの痛みや違和感のほか、ひざ崩れといって歩いているときや階段を下りるときに当然、ひざがガクッと抜けてしまうことがあります。また、ひざの曲げ伸ばしをするときに違和感があったり、ゴリゴリと音がすることもあります。

 

半月板も軟骨の一種のため、損傷すると治りません。

「ひざの安定性」を支える靭帯が切れると…

<靭帯損傷>

半月板損傷と並んでスポーツ選手に多い障害が靭帯損傷です。

 

膝関節には4つの靭帯(内側側副靭帯・外側側副靭帯・前十字靭帯・後十字靭帯)が備わっており、これらによってひざの不必要な動きを制限し、安定した動きができるようになっています。

 

特にスポーツで踏ん張ったり、急に止まったり、方向転換をしたり、ジャンプをした着地の際に痛めやすいのが前十字靭帯です。前十字靭帯は、脛骨が前にズレるのを抑える役割があるため、それらの動きは大きな負荷が加わりやすいからです。バスケットボールやバレーボール、ラグビーの競技中に多く見られます。

 

前十字靭帯が切れると、大腿骨に対して脛骨が前にズレて関節が不安定になります。普段の生活はなんとか維持できますが、ひざに力を入れようと思っても力が入らず、転んでしまうことがあります。

 

このほか、ひざの内側を安定させる働きをしている内側側副靭帯の損傷は、ひざを無理に捻ったりして強い力が加わると起こります。スキーなどでひざを痛めた場合の多くがこの障害です。ひざの内側の痛みが強く、不安定になって歩行困難になるのが特徴です。

 

ひざの横方向の安定を保っている外側側副靭帯は、内側の靭帯と比べて柔軟性が高いので、スポーツで損傷することはあまり見られません。この靭帯は、交通事故などでひざに大きな力が直接加わったときに損傷が起こります。

 

靭帯は関節内にあるため血流が乏しく、いったん断裂すると再生することはありません。

 

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他にも「ひざが痛くなる病気」はこれだけある

これまでに挙げた病気が代表的なひざ疾患ですが、ほかにも関節リウマチ、化膿性関節炎、痛風などがあります。

 

<関節リウマチ>

自己免疫によって関節に炎症が起こり、やがて機能障害が生じ、それらが慢性的に続く病気が関節リウマチです。

 

私たちの体には、体外から侵入してきた細菌やウイルスを攻撃し、排除する免疫システムが備わっています。しかし、このシステムに異常が起きると、自分自身の正常な組織を外敵とみなして攻撃するようになります。その結果、さまざまな炎症や障害が起きてしまいます。

 

変形性膝関節症が膝関節だけに炎症が起こるのに対し、関節リウマチは自己免疫疾患のため膝関節だけではなく、肩や肘(ひじ)、股関節など複数の関節に影響が及ぶことがあります。

 

<化膿性関節炎>

細菌感染によって関節内が化膿して関節炎が起こる病気が化膿性関節炎です。原因となる主な菌は黄色ブドウ球菌ですが、ほかにも連鎖球菌(れんさきゅうきん)、肺炎球菌(はいえんきゅうきん)などがあります。

 

細菌感染が原因のため全身の関節に発症しますが、多く見られるのは膝関節です。感染経路には、例えば膝関節への注射の傷から細菌が侵入するなど、原因はさまざまです。

 

<痛風>

血液中に尿酸が過剰に増え、それが結晶となって関節などに蓄積して刺激することで、炎症や激痛を起こす病気が痛風です。針のような形をしている尿酸の結晶が、痛覚神経を刺激して激しい痛みを起こします。

 

尿酸は通常、尿や便とともに体外に排出されますが、アルコールやカロリーの過剰摂取などによって尿酸が過剰につくられたり、排出がうまくできなくなると、血液中の尿酸濃度が高くなって痛みが現れるようになります。

加齢、体重増加、筋力低下…半月板損傷の原因は様々

半月板損傷は、1回のケガで半月板が損傷するほどのダメージを受けるような激しいスポーツを行っている人だけに起こるものではありません。将来的に変形性膝関節症になりやすいという状況から考えても、加齢や筋力の低下、体重の増加など、いろいろな要素が重なって起こることがあるのです。

 

例えば、若い頃より10キロも体重が増えていればひざへの負担も大きくなり、その状態が続いているとひざは体重を支えきれずに関節軟骨だけにとどまらず、半月板へもダメージを与えます。また、加齢とともに筋力が落ち、繰り返しひざに負担がかかることによって徐々に半月板が変性していき、切れてくることもよく見られます。

 

実際に、変形性膝関節症を抱えている高齢者の多くは、半月板損傷も合併しています。

 

正常なときには関節軟骨と関節の中に挟まれている半月板の適合性(フィット感)は良く、スムーズな関節運動を行っています。しかし、どちらかが痛むとフィット感が悪くなり、双方ともに痛んでくるのです。

 

関節軟骨がすり減ってくれば当然、半月板とのフィット感が悪くなり、本来は骨と骨の間に挟まれているように存在している半月板が、徐々に潰れていって変性したり、切れたりしながら外側にはみ出すことが多く見られます。

 

また、若い頃にスポーツで半月板を損傷している場合は、クッションの役割が落ちてくることで関節軟骨に負荷がかかって痛んでいき、変形性膝関節症も合併します。

 

関節軟骨と半月板のどちらが先かは人によって異なりますが、いずれの場合も影響し合っているために両方ともに痛めることとなります。

 

 

松田 芳和

まつだ整形外科クリニック 院長

 

 

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まつだ整形外科クリニック 院長 

1994年、富山医科薬科大学(現富山大学)の医学部卒業。アメリカでの研修・留学を経験。

2006年には膝専門医が選ばれるJohn. Insallトラベリングフェローに、アジア・環太平洋代表として選出(当時日本人として2人目、世界では毎年4名)。

2007年には日本整形外科学会代表としても選出される(毎年1名)。

2010年に医療法人社団nagomi会を設立し、当法人の理事長を務めるとともに、日本整形外科学会専門医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター、日本医師ジョガーズ連盟所属ランニングドクター、埼玉県ラグビー協会メディカル委員、一般社団法人健康スポーツ研究会会長など多くの役職に就く。

2020年からは城西大学薬学部客員教授に就任。国内外の学会発表、論文多数あり。

著者紹介

連載ひざ革命~最期まで元気な歩行を可能にする再生医療

※本連載は、松田芳和氏の著書『ひざ革命』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

ひざ革命 最期まで元気な歩行を可能にする再生医療

ひざ革命 最期まで元気な歩行を可能にする再生医療

松田 芳和

幻冬舎メディアコンサルティング

ひざ痛の予防から再生医療まで。 人生100年時代を豊かに生きるための「ひざ寿命」の延ばし方を徹底解説。 昨今、「健康寿命」の重要性が問われています。 人生100年時代といわれて久しいですが、その生活の質を左右す…

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