生産指数・前月比+6.2%と2ヵ月ぶり上昇。自動車、生産用機械が上昇
経済産業省の生産指数・基調判断は「生産は持ち直している」で据え置き
7~9月期は生産予測指数等から見て5四半期連続・前期比上昇の見込み
6月分一致CI前月差は上昇が予測され、基調判断は「改善」継続の見込み
(鉱工業生産)
●鉱工業生産指数・6月分速報値・前月比は+6.2%と、2ヵ月ぶりに上昇した。季節調整値の水準は99.3で、21年4月の100.0以来の水準になった。前年同月比は+22.6%で4ヵ月連続の上昇となった。
●6月分鉱工業生産指数では、全体15業種のうち、11業種が前月比上昇、2業種が前月比横這い、2業種が前月比下降となった。自動車工業や生産用機械工業等が前月の反動増などにより大幅に上昇したことなどで、全体として、20年7月(+6.9%)以来の大幅な上昇率となった。
●経済産業省の基調判断は20年4月分・5月分で「総じてみれば、生産は急速に低下している」だったが、6月分で、「生産は下げ止まり、持ち直しの動きがみられる」に上方修正された。7月分で下げ止まりが外れ、「生産は持ち直しの動きがみられる」となった。8月分では、「生産は持ち直している」に上方修正された。その後、今回の21年6月分まで、「生産は持ち直している」で据え置きになっている。
●先月発表された製造工業予測指数6月分は前月比+9.1%上昇する見込みであった。過去のパターン等で製造工業予測指数を修正した経済産業省の機械的な補正値でみると、6月分の前月比は先行き試算値最頻値で+5.4%の上昇になる見込みであった。90%の確率に収まる範囲は+3.6%~+7.2%の見込みであった。実際には、鉱工業生産指数の前月比が+6.2%の上昇になったが、これは製造工業予測指数や、試算値上限を下回る上昇率である。
●6月分速報値の鉱工業出荷指数は、前月比+4.3%と2ヵ月ぶりの上昇になった。前年同月比は+18.7%で4ヵ月連続の上昇となった。
●6月分速報値の鉱工業在庫指数は、前月比+2.3%と3ヵ月ぶりの上昇になった。前年同月比は▲4.8%と14ヵ月連続の低下となった。
●6月分速報値の鉱工業在庫率指数は、前月比▲0.3%で、2ヵ月ぶりの低下になった。前年同月比は▲21.5%と9ヵ月連続の低下となった。
●鉱工業全体の在庫循環の動きをチェックするために、縦軸に鉱工業在庫指数・前年比、横軸に鉱工業出荷指数・前年比をとった在庫サイクル図をつくると、20年7~9月期までは「在庫調整局面」の状態にあったが、20年10~12月期、21年1~3月期では「意図せざる在庫減局面」になっていた。4~6月期では在庫の前年同月比▲4.8%、出荷が前年の反動もあり、前年同月比+18.7%と2ケタの伸び率になり、「在庫積み増し局面」に入った。
●鉱工業生産指数の先行きを製造工業予測指数でみると7月分は前月比▲1.1%の低下、8月分は前月比+1.7%上昇の見込みである。過去のパターン等で製造工業予測指数を修正した経済産業省の機械的な補正値でみると、7月分の前月比は先行き試算値最頻値で▲2.2%の低下になる見込みである。90%の確率に収まる範囲は▲4.0%~▲0.4%になっている。
●先行きの鉱工業生産指数、7月分を先行き試算値最頻値前月比(▲1.1%)で延長したあと、8月分を製造工業予測指数前月比(+1.7%)で、9月分の前月比を0.0%で延長すると、7~9月期の前期比は+0.6%の上昇になる。また、7月分・8月分を製造工業予測指数前月比(▲1.1%、+1.7%)で、9月分の前月比を0.0%で延長すると、7~9月期の前期比は+1.7%の上昇になる。7~9月期は5四半期連続の前期比上昇になる可能性が大きそうな状況だろう。
(6月分の景気動向指数・速報値予測)
●6月分の景気動向指数・速報値では、先行CIが前月差+1.5程度と2ヵ月ぶりの上昇になると予測する。速報値からデータが利用可能な9系列では、鉱工業生産財在庫率指数(逆サイクル)、新規求人数、消費者態度指数、日経商品指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの6系列が前月差プラス寄与に、最終需要財在庫率指数(逆サイクル)、新設住宅着工床面積、マネーストックの3系列が前月差マイナス寄与になると予測した。
●6月分の一致CIは前月差+2.1程度と2ヵ月ぶりの上昇になると予測する。速報値からデータが利用可能な8系列では、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、有効求人倍率、輸出数量指数の6系列が前月差プラス寄与に、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業の2系列が前月差マイナス寄与になると予測した。
●6月分で景気の基調判断は、景気拡張の可能性が高いことを示す「改善」が継続されると予測する。景気拡張の動きが足踏み状態になっている可能性が高いことを示す「足踏み」に下方修正される条件は「3ヵ月後方移動平均(前月差)の符号がマイナスに変化し、マイナス幅(1ヵ月、2ヵ月、または3ヵ月の累計)が1標準偏差分以上かつ当月の前月差の符号がマイナス」になることである。6月分は一致CIの前月差が上昇する見込みなので、「改善」が維持されることになると予測する。
●6月分の先行DIは66.7%程度と景気判断の分岐点の50%を12ヵ月連続で上回ると予測する。速報値からデータが利用可能な9系列中、最終需要財在庫率指数(逆サイクル)、新規求人数、消費者態度指数、日経商品指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの6系列がプラス符号に、鉱工業生産財在庫率指数(逆サイクル)、新設住宅着工床面積、マネーストックの3系列がマイナス符号になるとみた。
●6月分の一致DIは62.5%程度と景気判断の分岐点の50%を上回ると予測する。速報値からデータが利用可能な8系列中、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・卸売業、有効求人倍率の5系列がプラス符号に、耐久消費財出荷指数、商業販売額指数・小売業、輸出数量指数の3系列がマイナス符号になると予測した。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2021年6月分鉱工業生産指数・速報値について』を参照)。
(2021年7月30日)
宅森 昭吉
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
理事・チーフエコノミスト