(※写真はイメージです/PIXTA)

いくら多額の資産を保有していても、所有者が活用することもなく、死後に相続させる相続人や特別縁故者もなければ、国庫に入ってしまいます。本記事では、天涯孤独となった資産家男性の事例を取り上げながら、資産との向き合い方について考察します。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに解説します。

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    3億円の財産を残して孤独死した、元大手企業会社員

    数ヵ月前、筆者のもとに訃報が届きました。亡くなったのは伊藤さんとおっしゃる70代の独身男性で、かつて伊藤さんのご両親が亡くなった際、相続税の申告や賃貸併用住宅の建築のコーディネートをさせていただいたというご縁のある方です。

     

     

    伊藤さんは自宅でひとり暮らしをしていましたが、ポストに新聞がたまっているのを不審に思った配達員が警察に通報し、室内で亡くなっているのが発見されたということでした。いわゆる孤独死です。

     

    伊藤さんが父親の相続対策の件で筆者のもとを訪れたのは、約10年前です。伊藤さんの父親は資産家で、120坪の敷地に建つ自宅のほか、アパート、貸家、駐車場、預金など合計で3億円ほどの財産を所有しており、相続税の申告が必要でした。相続人は母親と伊藤さんの2人で、そのときは配偶者の特例を生かすかたちで節税を行いました。

     

    同時に、母親の二次相続対策のために自宅を建て替えることも提案したところ、豪華な自宅は不要とのことで、賃貸併用住宅を選択。母親の生活を考え、自宅部分を1階として、1階1部屋、2階3部屋の賃貸住宅を建設しました。建築費は借入なしで、所有となる母親の金融資産を充てました。現金を建物に変えただけで半分以上財産評価が下がり、高い節税効果が得られたほか、自宅がとても快適になったと喜ばれていたのが印象的でした。

    潤沢な資産があるのに、質素な生活を変えられず…

    その数年後、母親が亡くなったことで伊藤さんはひとり暮らしとなりました。父親の相続手続きのときに知ったのですが、伊藤さんには父親より先に亡くなった独身の弟さんがいました。そのため、両親が亡くなったあと、伊藤さんは完全に身寄りのない状態となったのです。

     

    伊藤さんは65歳まで大手企業の会社員として勤務し、その後はリタイヤしました。しかし、高額な年金も家賃収入も入ります。筆者は「財産を使うのも生き方のひとつですよ。旅行や趣味にどんどん使って、人生を楽しんではいかがですか?」とアドバイスしていました。

     

    しかし伊藤さんは、不動産だけでなく、預金も1億円近くお持ちなのに、車を買い替えるときも国産車です。ご両親も質素な生活をしてこられたようで、そうした生活が身についているのでしょう。相続人がいないのですから、もっと割り切って使ったらいいのにと思いましたが、長年の生活は変えられないのか、財産が減る要素はありませんでした。

    伊藤さんの孤独死を知らせた、警察からの電話

    伊藤さんが建てた賃貸住宅は、筆者の運営するグループ会社が賃貸管理を引き受けていました。この物件はずっと満室で退去もほとんどなく、賃貸事業は安定していました。家賃は指定口座に振り込み、毎月の賃料の明細書は担当者からの手渡しでしたが、不在のときは郵送するようにいわれていたため、担当者も数ヵ月会わないときがあったといいます。

     

    とはいえ、それまでは伊藤さんはずっとお元気で、賃貸の住人からも変わったところはないと聞いていました。そこに突然の警察からの電話です。アパートの看板にグループ会社の連絡先の記載があり、それを見た警察の方が連絡してくれたのです。伊藤さんは70歳になったばかりでした。

     

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    本記事は、株式会社夢相続が運営するサイトに掲載された相談事例を転載・再編集したものです。

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