(※写真はイメージです/PIXTA)

いくら多額の資産を保有していても、所有者が活用することもなく、死後に相続させる相続人や特別縁故者もなければ、国庫に入ってしまいます。本記事では、天涯孤独となった資産家男性の事例を取り上げながら、資産との向き合い方について考察します。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに解説します。

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    年間440億円もの財産が「国庫」に入っている

    人が亡くなった場合、相続人となるのは原則として配偶者と子どもです。両方いないおひとり様の場合は、両親か祖父母が相続人です。伊藤さんのように、両親も祖父母も亡くなっていて、しかもきょうだいもいないひとりっ子の場合は、相続人がいないことになります。最近では、こうした人が増えているのです。

     

    相続人がない財産は国のものになりますが、最近では年間約440億円もの財産が国庫に入っている状況です。

     

    身の回りの世話をするなど親密な関わりのあった親族などは、家庭裁判所に「特別縁故者」として財産の一部をもらいたいという申請をすることはできますが、そもそも財産管理人になる弁護士の選任などが必要で、手続きには100万円以上の費用が必要となるほか、時間もかかります。しかも、それによって亡くなった方の財産すべてがもらえるわけではなく、認められるのはほんの一部であり、結局は大部分が国のものになるのです。

     

    おひとりさまが自分の意思を生かすには、やはり「遺言書」の作成が必須です。遺言書を用意しておけば、周囲を煩わせずにすむからです。

    遺言書も民法改正で作りやすく…若いうちから準備を

    自分の寿命はだれにもわかりません。いつどんなことが起こるかもわかりません。自分は若いし、死後の心配をするのはまだ先だと思うのではなく、若いうちから遺言書を作成して自分の意思を明示し、財産の渡し方などを決めておきましょう。

     

    遺言書は、法的に間違いのない「公正証書遺言」がお勧めですが、公証役場と証人の費用が必要になります。費用をかけずに自分で作成したいという場合、自分で書いた「遺言書」を2020年より法務局が保管してくれるよう民法が改正されました。家庭裁判所の検認も不要になりますので、遺言書が作りやすくなります。財産目録もパソコンでの作成が認められているほか、不動産の登記証明書や通帳の写しの添付も認められます。

     

    ただし、おひとりさまの場合、自分で書いた遺言書を自宅に保管していても、発見してもらえない可能性があります。法務局に保管してもらうと同時に、財産を渡す人(受遺者)か、遺言を実行してくれる人(遺言執行者)に知らせておくようにしましょう。

    趣味、起業、寄付…自分の財産は自分で使っていい

    筆者は伊藤さんとお話するなかで、遺言書作成は伊藤さんの考えがまとまるまで待とうと、先延ばしにしてしまいました。しかしこのような事態になり、もっと強くお勧めしておくべきだったと残念に思っています。

     

    財産を渡す人を遺言書に記せないのであれば、なおさら、自分の財産は自分のために使ってしまっていいのではないでしょうか。いまは個人の意思が尊重される、風通しのいい時代です。趣味、起業、ボランティア、寄付などなど、思いつく限りのことに活用しても、だれに咎められることもないはずです。

     

    生き方や生活スタイルはもちろん、財産の持ち方、使い方、相続の仕方など、時代によって変化します。後悔のない人生を送るためにも、ぜひ一度、自分のこれからに思いを巡らせてみるといいかもしれません。

     

     

    ※プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

     

     

    曽根 惠子

    株式会社夢相続代表取締役

    公認不動産コンサルティングマスター

    相続対策専門士

     

    ◆相続対策専門士とは?◆

    公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。

     

    「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。

     

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    本記事は、株式会社夢相続が運営するサイトに掲載された相談事例を転載・再編集したものです。

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