かつて、演歌の大御所が言っていた「お客様は神様です」という名言があります。本人によれば、その真意は「歌う時には、神前で祈るときのように、雑念を払って澄み切った心にならなければ完璧な芸を見せることはできない。だからこそ、お客様を神様とみて、歌を唄う。また、演者にとってお客様を歓ばせるということは絶対条件。それゆえお客様は絶対者、神様なのだ」というところにあるのですが、近年ではお客はお金を払うんだから神様のように偉い、そのように扱うべき、あるいは医師は治してやるから偉いんだといった考え方も横行しているようです。病院内でも、そのようなシーンを見かけることがちらほら……?

どこが悪いのか説明しなきゃ、わかるわけないだろう!

Aさんは交通事故の後遺症に悩まされていました。追突された際に腰椎を痛めており、梅雨時には腰痛に悩まされることもしばしば。あるとき、その痛みに耐えかねて、地元の整形外科病院に行ったそうです。その病院の先代院長は近所でも評判の優しい医師だったのですが、高齢だったこともあって、息子に跡を継がせました。この息子はアメリカの大学にある医学部を卒業しており、優秀らしいというもっぱらの評判でした。そうしたこともあったので、その病院を訪れたそうなのですが、医師の対応に驚かされたといいます。

 

初診の問診票に症状を記入し、しばらく待っていると診察室へ呼ばれました。挨拶をして座ると、おもむろに医師に「どこが痛いの」と言われたそうです。問診票に記入したのに、と思いながらも、交通事故で痛めた腰椎のことを話し、痛みが辛いことを伝えました。するとなぜか医師は「そんなことは聞いてないよ。どういう風に痛むのか説明してもらいたいんだよ」と怒り出しました。

 

なんで怒られているのか不思議だったAさんでしたが、腰痛について詳しく自己症状を説明したそうです。すると今度は「レントゲン写真を見て判断するから、自己分析はいらない」とまた叱られてしまいました。

 

レントゲン写真を見た結果、医師の診断はAさんが説明したことと同じようなこと。検査したからはじめてAさんの状態がわかり、診断できたというようなことを言われました。

 

Aさんは、それなら最初にいろいろ説明させなきゃいいだろう、と不満を抱えたまま、その医師への信頼感は消え失せ、別の病院に変えたそうです。

次ページ丁寧に患者と接することは大切だが…

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