事業承継という観点から検討すべきポイント
本Caseに関しては、事業承継という観点から、次の3点を指摘しておきたい。
A.前掲最判平成9年1月28日の当時、非嫡出子の法定相続分は嫡出子の2分の1であったため(平成25年改正前民法900条4号但書)、法定相続分は、Xらが合計10分の9、Cが10分の1であった。
現在、嫡出子も非嫡出子も法定相続分は同じであり、結果として、法定相続分は、Xらが合計6分の5、Cが6分の1となる。a.に掲げる「特段の事情」は、現在では、より一層生じる余地がなくなっている。
B.Caseでは、遺贈の効力が遺言無効として争われているが、Xらとしては、本件遺贈に対し遺留分減殺請求権を行使することも可能であった。遺留分減殺請求権の効果は物権的であるので、行使の結果、本件株式につき、やはり準共有が生じえた。
ただ、平成30年相続法改正により、遺留分「侵害額」請求権の効果は、単に債権的なものであるとされた(平成31年7月1日施行)。この場合、Xらは、Bに対し、遺留分を侵害する分に応じた金銭債権を有するにすぎないこととなる(平成30年改正民法1046)。
C.あくまでも推測であるが、Aが本件遺贈をした背景には、Bとの事実上の家族関係を尊重することの他に、Bとの間の子が息子で、正妻X1との間の子がいずれも娘であったということもあるのかもしれない。
「男系」の跡取りに拘泥する考えは、もはや時代遅れではあるのだが、前掲最判平成9年1月28日の当時においては、必ずしもそうではなかったのかもしれない。
松嶋 隆弘
日本大学教授
弁護士
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