跡取りは法律上の妻の子か、事実上の妻の子か?…株式の準共有者において権利行使者を定める基準【弁護士が事例で解説】

跡取りは法律上の妻の子か、事実上の妻の子か?…株式の準共有者において権利行使者を定める基準【弁護士が事例で解説】
(写真はイメージです/PIXTA)

本記事では、日本大学教授で弁護士の松嶋隆弘氏の『実例から学ぶ 同族会社法務トラブル解決集』(株式会社ぎょうせい)より一部を抜粋・編集し、会社法106条の「共有者による権利の行使」における「権利を行使する者一人を定める」ための基準について、学説や最高裁判所の判例を基に解説していきます。

跡取りは法律上の妻の子か、事実上の妻の子か?

Case

 

1.Yは、資本金500万円の特例有限会社である。Aは、Yの創業者であり、Yの資本金全額を出資し、その出資持分全部を保有し、Yの代表取締役を務めていた。Aは、妻X1との間に、X2、X3という2人の娘があったが、X1と、結婚後10年を過ぎた頃から不仲となり、別居することになった。

 

そして、Aは、別居と相前後して、Bと同棲をはじめ、AB間には、息子Cが誕生し、AはCを認知した。それだけでなくAは、自身の姓とBCの姓が異なることを避けるため、BとD(Aの親族)との間で、Bを養子とする旨の養子縁組をさせた。

 

ABは、事実上の夫婦として、Cとともに同居してきた。その後、Aは、平成30年9月12日、結腸癌のため入院し、10月12日手術を受けたものの、回復に至らず、11月9日、死亡した。

 

Aの法定相続人は、X1、X2、X3及びCの4人である。

 

2.Yは、平成30年10月18日、社員総会を開催し、BをYの代表取締役として選任する旨の決議を行った(本件社員総会決議)。

 

3.X1、X2及びX3(Xら)は、Aの死亡により自身らがYの持分権を共同で相続したとして、その社員たる地位に基づいて、本件社員総会決議が存在しないことの確認を求め、裁判所に提訴した(ただし、会社法106条本文に定める手続は履践されていない)。

 

これに対し、Yは、

 

(1)Aがその持分全部をBに遺贈した結果(本件遺贈)、XらはAの持分を相続しておらず、Yの社員たる地位を有しないから、かかる訴えにつき原告適格がなく、本件訴えは不適法である

 

(2)本件社員総会決議はYの持分全部を有するAによりなされたものであるから、有効に成立している

 

と主張して、これを争っている。

 

4.本件遺贈については、Xらは、本件訴えと別に、遺言無効の訴えを提起しており、管轄の地方裁判所に係属中である。

 

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次ページ本Caseにおける争点と最高裁判所の判例
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松嶋 隆弘

株式会社ぎょうせい

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