本Caseにおける争点と最高裁判所の判例
■はじめに
会社法106条本文は、「株式が二以上の者の共有に属するときは、共有者は、当該株式についての権利を行使する者一人を定め、株式会社に対し、その者の氏名又は名称を通知しなければ、当該株式についての権利を行使することができない」旨規定する。
その趣旨は会社の事務処理の便宜を図るところにある。本条は、元々、株式の共同相続を対象にした規定ではなかった。本条(に相当する規定)の制定当時(戦前)は、均分相続ではなく、家督相続が原則であったため、そもそも株式の共同相続という事態が発生しようがなかった。
ところが、第二次世界大戦後、相続法が改められ、均分相続が原則になった(民法898)。現在では、本条は、もっぱら株式の共同相続の場合を念頭に置いた規定となっている。
■最判平成9年1月28日集民181号83頁と多数決説
(1)問題の所在とさまざまな考え方会社法106条本文は、前記のとおり、準共有者の間で権利行使者一人を定めることを求めている。
しかし、いかなる基準で選ぶかにつき規定を置いておらず、解釈に委ねられる。考え方としては、ごくおおざっぱに言うと、準共有者の全員一致で権利行使者を選定しなければならないという見解(A説)と、持分の価格の過半数で決すべきとする見解(B説)とがありうる。
(2)最判平成9年1月28日集民181号83頁の判旨本Caseの素材となった最判平成9年1月28日集民181号83頁は、この問題についてのリーディング・ケースであり、次のとおり判示する。
a.「有限会社の持分を相続により準共有するに至った共同相続人が、準共有社員としての地位に基づいて社員総会の決議不存在確認の訴えを提起するには、………社員の権利を行使すべき者(以下「権利行使者」という)としての指定を受け、その旨を会社に通知することを要するのであり、この権利行使者の指定及び通知を欠くときは、特段の事情がない限り、右の訴えについて原告適格を有しないものというべきである………。」
b.「そして、この場合に、持分の準共有者間において権利行使者を定めるに当たっては、持分の価格に従いその過半数をもってこれを決することができるものと解するのが相当である。けだし、準共有者の全員が一致しなければ権利行使者を指定することができないとすると、準共有者のうちの一人でも反対すれば全員の社員権の行使が不可能となるのみならず、会社の運営にも支障を来すおそれがあり、会社の事務処理の便宜を考慮して設けられた右規定の趣旨にも反する結果となるからである。」
(3)前掲最判平成9年1月28日の射程をめぐる議論
前掲最判平成9年1月28日は、B説を是とする旨明言している。しかし、その判断は仮定的であることに注意を要する。
Caseでは、遺贈の効力を争う遺言無効の訴えが別に訴訟係属しており、Y社の持分の帰趨は、最終的には、この遺言無効の訴えに関する判決により決される。
遺贈の効力は、一般に物権的であると解されており、本件遺贈が有効なら、Xらは、Y社持分につき全くの無権利者となる。
他方、本Caseにおける争点は、Y社の社員総会決議の効力である。
前掲最判平成9年1月28日は、遺言無効の訴えに関し、判断が下されていないという状況で、仮に、Xらが持分権者であったとしても、権利行使者を定めるべきであったと判示して、権利行使者を定めず提起した訴えを不適法却下した第1審(東京地判平成4年2月18日金判1019号28頁)、原審(東京高判平成5年7月5日金判1019号25頁)の判断を是認し、Xらの上告を棄却したものである。
つまり、多数決説を採る判示bの部分は、傍論にすぎない。前掲最判平成9年1月28日が、最高裁の正式な判例集である最高裁民事判例集(民集)に登載されていないのも、このような事情によるのであろう。
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