「馴合訴訟」による新株発行無効の確定判決に「再審」が認められた理由【弁護士が事例で解説】

「馴合訴訟」による新株発行無効の確定判決に「再審」が認められた理由【弁護士が事例で解説】
(写真はイメージです/PIXTA)

本記事では、日本大学教授で弁護士の松嶋隆弘氏の書籍『実例から学ぶ 同族会社法務トラブル解決集』(株式会社ぎょうせい)より一部を抜粋・編集し、「馴合訴訟」による判決に民事訴訟法第338条1項3号の再審事由があると認められた理由を最高裁判所の判決を基に解説します。

「馴合訴訟」への再審の訴えは認められるか

Case

 

1.Y1は株式会社であり、Xは、Y1の代表取締役であった。Xは、Y1の新株予約権者を有していたところ、当該新株予約権を行使し、Y1は、これに相応する1500株の普通株式(本件株式)を発行した(本件株式発行)。そして、本件株式発行の結果、Xは、Y1の株主となった。

 

その後、Xは、Y1の代表取締役を解職された。Xの解職後、Y1は、X保有にかかる本件株式につき質権設定を受けたとするAに対し、本件株式発行は見せ金によって払込みの外形を作出してされた無効なものである旨の通知をした。

 

これに対し、X及びAは、Y1に対し、本件株式発行は有効なものである旨反論した。

 

2.かような状況の下、Y1の株主であるY2は、主位的に本件株式発行の不存在の確認を、予備的に本件株式発行を無効とすることを求める訴えを提起した(前訴)。Y2は前訴において、本件株式発行は見せ金によって払込みの外形が作出されたものにすぎないことなどを主張した。

 

前訴の第1回口頭弁論期日において、被告であるY1は、Y2の請求を認めるとともに、請求原因事実を全て認める旨の答弁をした。

 

前訴の受訴裁判所は、当事者双方から提出された書証を取り調べた上、請求原因事実についての追加立証を検討するよう指示して口頭弁論を続行し、第2回口頭弁論期日において、Y1から提出された、本件株式発行が見せ金によるものであることなどが記載された陳述書を更に取り調べた上、口頭弁論を終結し、本件株式発行を無効とする判決(前訴判決)を言い渡した。そして、前訴判決は確定した。

 

3.Xは、前訴判決確定後に前訴判決の存在を知り、前訴につき、独立当事者参加(民事訴訟法(民訴法)47)の申出をするとともに(本件独立当事者参加)、再審の訴えを提起した。再審事由に関し、Xは、民訴法338条1項3号の代理権欠缺に準じた再審事由があると主張している。

 

■問題の所在

 

本Caseにおける実質的対立は、Y1対Y2間ではなく、Y1対X間に存している。かような中、Y1と意を通じていると思われるY2とY1との間で新株発行無効の訴えが、馴合訴訟として行われると、無効判決の効果は、対世効を有するため(会社法838)、Y1はXに対して行った本件株式発行を、Xに邪魔されることなく、無効とすることができる。かかる馴合いを許容してよいかが本件で問われている。

 

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