(写真はイメージです/PIXTA)

本記事は、ニッセイ基礎研究所が2021年7月6日に公開したレポートを転載したものです。

要旨

本稿では、コロナ禍の影響を強く受けた2020年度の不動産売買市場を振り返り、リーマン・ショック後の動向と比較することを通じて、その特徴を確認したい。

 

2020年度の不動産取引額(開発用地を含む)は4兆3,636億円となり、前年度比▲20%減少した。前年比でマイナスとなったものの、過去平均(2008年~2019年度で約4.4兆円)並みの水準を確保した。

 

セクター別の取引額をみると、オフィスが約1.5兆円(占率36%)、次いで、賃貸マンションが約0.9兆円(21%)、物流施設が約0.8兆円(19%)、開発用地が約0.5兆円(12%)、商業施設が約0.3兆円(7%)、ホテルが約0.2兆円(4%)となった。うち、賃貸マンションと物流施設の取引額は過去最高となった。

 

次に、投資主体別の取引額を外国資本と国内資本に分けて集計すると、外国資本が約1.5兆円(前年比+1%)、国内資本が約2.9兆円(▲28%)となった。

 

2020年度とリーマン・ショック後の市場環境や取引内容(2009年度~2010年度)を比較すると、その特徴について以下が確認できる。

 

(1)中央銀行が大規模金融緩和で流動性を供給。金融機関の融資姿勢は厳格化せず

(2)セクターでは物流施設の存在感が高まる。外国資本は積極的な投資姿勢を継続

(3)事業会社の不動産売却が増加。不動産投資市場の拡大

 

2020年度の不動産売買市場は、大規模な金融緩和と外資流入を背景に取引額が大きく減少することはなく、セクターとしては物流施設の存在感が高まっている。また、事業会社や電鉄会社によるこれまでにないような優良な不動産の売却が増加しており、今後の不動産投資市場の拡大・活性化が期待される。

 

ただし、コロナ禍による経済の不確実性は依然として高く、引き続き、金融市場や不動産賃貸市況、資金フローの動向に十分留意したい。

はじめに

新型コロナウイルス感染拡大により実体経済が低迷し、不動産賃貸市場についても先行き不透明感が強まる中、2020年度(20年4月~21年3月)の不動産取引額は過去平均並みの水準を確保した。本稿では、コロナ禍の影響を強く受けた2020年度の不動産売買市場を振り返ったのち、リーマン・ショック後の動向と比較することを通じて、その特徴を確認したい。

 

次ページ2020年度(20年4月~21年3月)の不動産売買市場の動向

本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

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