2020年度(20年4月~21年3月)の不動産売買市場の動向
RCA(Real Capital Analytics)のデータによると、2020年度の不動産取引額(開発用地を含む)は4兆3,636億円となり、前年度比▲20%減少した。前年比でマイナスとなったものの、過去平均(2008年~2019年度で約4.4兆円)並みの水準を確保した[図表1]。2020年3月に、J-REIT市場がリーマン・ショック時(2008年)に次ぐ下落率を記録し、不動産売買市場への影響が懸念されたが、実際には投資家の不動産投資意欲が減退することはなく、取引額の大幅な落ち込みは回避されたと言える。
セクター別の取引額をみると、オフィスが約1.5兆円(占率36%)となり、引き続き第1位の座をなんとか維持した。次いで、賃貸マンションが約0.9兆円(21%)、物流施設が約0.8兆円(19%)、開発用地が約0.5兆円(12%)、商業施設が約0.3兆円(7%)、ホテルが約0.2兆円(4%)となった。このうち、賃貸マンションと物流施設の取引額は過去最高となった。
また、取引額の増減率(2019年度対比)をみると、賃貸マンション(前年比+37%)と物流施設(+4%)、開発用地(+3%)が増加し、これで賃貸マンションは2年連続、物流施設は3年連続で増加した[図表2]。
一方で、オフィス(前年比▲25%)や商業施設(▲54%)、ホテル(▲72%)の取引額が減少し、中でも、ホテルと商業施設の大幅減少が目立つ1年となった。このように、コロナ禍においては収益悪化が懸念されるセクターへの投資意欲が低下する一方で、安定したキャッシュフローが期待できるセクターを選好する投資家が増加したようだ。
次に、投資主体別の取引額を外国資本と国内資本に分けて集計すると、外国資本が約1.5兆円(前年比+1%)、国内資本が約2.9兆円(▲28%)となった[図表3]。
したがって、2020年度の取引額の減少(▲20%)は、主に国内資本の投資減少によるものであったことが分かる。この結果、取引に占める外国資本の比率は34%となり、過去最高を記録した。