(※写真はイメージです/PIXTA)

働き方が急速に変わりつつある中でも、日本の「年功序列」は健在です。老後不安が大きく叫ばれるようになった現代において、長く勤めていれば昇進・昇給するシステムに安心感を覚える人も少なくないでしょう。しかし、このような忠誠心・協調性を求める働き方は、労働者にとっても組織にとっても「リスクでしかない」という事実をご存じでしょうか。※本記事は、谷本真由美氏の著書『日本人が知らない世界標準の働き方』(PHP研究所)より一部を抜粋・再編集したものです。

いまや「年功序列は差別である」という認識が主流

欧州や北米では、年功序列賃金がある公共機関や古い大企業ですら、最近は年功序列賃金は廃止の方向にあります。

 

例えばイギリスの国立病院機構(NHS)の家庭医は全員公務員ですが、2020年から年功序列賃金が廃止されることになりました。年功序列賃金は、働く人の意欲をそぎ、技能や担当する仕事に対して支払うべき報酬とリンクしない、というのがその理由です(※3)

 

さらに最近では、年功序列というのは、報酬の平等性の観点から時代遅れである、という見方が強くなっています。例えばイギリスでは、公的機関は年功序列賃金を採用している場合がありますが、政府機関に対して、年功序列は差別であると訴えるケースが目立っています。

 

働いている機関や年齢で報酬に差をつけることは、転職してきた人や、出産や家族の世話などでキャリアを中断することが多く、男性に比べて就労年数が短くなりがちな女性に対する差別であるというのが訴えの内容です。さらに、イギリスだけではなく、欧州では同一労働同一賃金という、同じ仕事であれば同じ報酬をもらう、という考え方が一般的なので、仕事の内容や能力とまったく関係がない年功序列は、同じく労働者差別に当たるという考え方が出てきています。

 

イギリスでは、2009年には、政府が運営する労働裁判で、年功序列は差別である、という訴えが80件以上起こされています。「Bernadette Cadman 対 HSE」という訴訟では、年功序列は性差別である、と政府に対して訴えた女性が勝訴しています。つまり、報酬の点から見て、年功序列というのは、その人の仕事の成果や能力ではなく、年齢や勤続年数などの「属性」を重視することから、労働者に対する差別なのです。スウェーデンでは公務員の年功序列賃金は廃止されています。

 

※3 http://careers.bmj.com/careers/advice/view-article.html?id=20015484

 

 

谷本 真由美

公認情報システム監査人(CISA)

日本人が知らない世界標準の働き方

日本人が知らない世界標準の働き方

谷本 真由美

PHP研究所

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