「AIを活用したヘッジファンド」の6つの戦略タイプ (※写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、東海東京調査センターの中村貴司シニアストラテジスト(オルタナティブ投資戦略担当)への取材レポートです。今回は、AI(人工知能)型のヘッジファンドの6つの戦略タイプについて見ていきます。

ヘッジファンドには様々な戦略タイプがある

ヘッジファンドには様々な戦略タイプがある。たとえば、「CTA戦略」は、市場の上昇・下落トレンドを見極めて売買することで収益を狙う戦略のことをいう。ちなみに、CTAとは商品投資顧問業者のことで、「トレンドフォロー戦略」などが有名だろう。

 

また、「グローバルマクロ戦略」は、株式、債券・金利、為替など世界中の国や地域のマクロ経済見通しや財政・金融政策に加え、対外政策に絡む政治要因なども把握した上でポジションを構築して収益を上げる戦略のことで、ジョージ・ソロスなどのヘッジファンドがとった手法として有名である。

 

その他には、「アービトラージ」「レラティブバリュー」「破綻(ディストレス)証券」「マーケットニュートラル」「ロングショート」「ボラティリティロング・ショート」、マルチストラテジー」などの戦略がある。

「AI型ヘッジファンド」の6つの戦略タイプ

「AI戦略」で有名なヘッジファンドは、世界最古の歴史を持ち最大級の英国ヘッジファンドであるマングループや、ジェイムス・シモンズ氏(数学者で人間の感情、バイアスを排除した機械的な運用を実施し巨万の富を築いたことで知られる)が率いるルネッサンステクノロジー、ツーシグマやブリッジウォーター・アソシエイツなどが有名である。

 

とはいえ、AI戦略型のヘッジファンドは、運用の中身や投資手法がわかりにくいとの批判の声もある。そのような場合には、AI活用によるヘッジファンドの戦略タイプを次の6つに分けると全体像がつかみやすい。

 

【AIを活用したヘッジファンドの戦略タイプ】

(1)時系列モデルとして活用
→株価、出来高データなどのテクニカルデータなども活用

(2)自然言語処理として活用
→ポジティブワードやネガティブワードの量、表現の変化などを活用

(3)画像処理として活用
→CNN、チャートのパターン分析などを活用

(4)ファクターによるクロスセクションとして活用
→モメンタム、リターンリバーサルやトレンド、オシレーターのスイッチングなど

(5)エージェント・ベーストモデルとして活用
→分析手法の別、投資主体の別、参加者の数、資金量の違いによる市場の動きを分析

(6)ヘッジファンドマネージャーの行動変容・メンタルコントロールとして活用
→合理的な投資行動に向けて、また非合理的な投資行動を回避するためのリスク管理として活用

 

もう一段、具体的なAI戦略をイメージするためには、学術論文に掲載された投資戦略を参考にすることも重要だろう。たとえば、日本でのAIを活用した学術論文のなかには、株価変動パターンの類似性を用いた戦略分析がある。

 

代表的な世界の株価指数であるTOPIX、SP500、FTSE、DAX、CACなどを用いて、月末に当月と類似したパターンを過去から探索し、当該パターンを用いた月次の投資判断を買いと売りで分類予測する。

 

検証期間は2006年1月から2017年8月までの10年超の長期期間とし、分類手法は類似パターンを探索するIDTW(Indexation Dynamic Time Warping)+類似パターンから予測を行うk*NN(modification k-nearest neighbor algorithm)を用いている。

 

IDTW+k*NNを用いた相場のパターン認識による投資手法は、10年間で60%の平均正解率および200%超の累積リターンをもたらした。これは、モメンタム効果に加え、価格変動パターンが予測に有効であるという、弱度の効率的市場仮説に対する反例と言える。

 

効率的市場仮説をベースとしたファンダメンタルズ分析が機能しない局面(人間の合理性では上手く対処できない局面を含む)での対応や戦略分散によるポートフォリオのリスク管理という点で、AI戦略型のヘッジファンド活用も一つの選択肢になると考える。

 

組み込む場合には、持続可能なポートフォリオ運用の観点から、コアの部分では学術的な裏付けがあり、検証および説明可能なAI戦略を活用したヘッジファンドで対応するのが望ましいだろう。

 

一方、サテライト部分においては、機械運用のアノマリーとしてオプション的に活用するのであれば、合理的な説明はできないものの、投資収益の高いブラックボックス型のAI戦略も投資対象になろう。

 

中村 貴司

東海東京調査センター

投資戦略部 シニアストラテジスト(オルタナティブ投資戦略担当)

 

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東海東京調査センター
投資戦略部 シニアストラテジスト(オルタナティブ投資戦略担当)

山一證券、メリルリンチ日本証券、損保ジャパンアセット(現SOMPOアセット)などでの富裕層・法人営業に加え、年金基金、投資信託のアナリストやファンドマネージャーとして新興市場やオルタナティブを含む幅広い市場・商品の担当責任者を経て、2016年に東海東京調査センター入社。

現職では短中期の戦術的資産配分(タクティカル・アセットアロケーション)やオルタナティブ投資(ヘッジファンド・テクニカルやコモディティ戦略含む)の視点を踏まえたグローバルな日本株の市場分析等を行う。他の代替資産・戦略としてJリート投資戦略、ESG投資戦略、行動ファイナンス投資戦略などもカバーしている。

英国国立ウェールズ大学経営大学院MBA。アライアント国際大学・カリフォルニア臨床心理大学院米国臨床心理学修士号(MA)。慶應義塾大学商学部卒。国際公認投資アナリスト(CIIA)、日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)、国際テクニカルアナリスト連盟検定テクニカルアナリスト(MFTA)、CFP、英国王立勅許鑑定士(MRICS)、不動産証券化協会認定マスター、中小企業診断士。

日経CNBCなどのTV・メディアに出演。日経新聞、QUICK、ロイター、ブルームバーグ、時事通信、東洋経済オンライン、幻冬舎ゴールドオンラインなどでも執筆、コメントを行う。ヘッジファンド・テクニカルのキャリアとして世界のテクニカルアナリスト協会を束ねる国際テクニカルアナリスト連盟(IFTA)の理事などを歴任。早稲田大学ビジネスファイナンスセンターや同志社大学、青山学院大学等で講師を務める。

著書には投信営業に行動ファイナンスアプローチなどを活用した『会話で学ぶ!プロフェッショナルを目指す人の「投信営業」の教科書』(2021年)がある。

●オルタナティブ投資戦略(東海東京TV)
https://www.tokaitokyo.co.jp/tv/public/market/global.html

著者紹介

連載東海東京調査センター「オルタナティブ投資戦略取材レポート」

このレポートは、投資判断の参考となる情報の提供を目的としたもので、投資勧誘を目的としたものではありません。投資判断の最終決定は、お客様自身の判断でなさるようお願いいたします。このレポートは、信頼できると考えられる情報に基づいて作成されていますが、東海東京調査センターおよび東海東京証券は、その正確性及び完全性に関して責任を負うものではありません。なお、このレポートに記載された意見は、作成日における判断です。

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