「良い会社」ではなく「割安な会社」が売れる
逆に、ベンチャー企業などで、積極的な投資を行ってきて、業績が良く収益性が非常に高いけれども、自己資本比率は低く内部留保はほとんどない、といった会社はどうなるかといえば、こちらはM&Aでは高く評価されます。
しかし、こういった会社の経営者は往々にして、非常に高い譲渡価格を望みます。譲渡価格の目安の算定については、M&Aにおける理論的な株式価格、あるいは、M&A市場の相場といってもいいですが、それよりもはるかに高い金額を希望される場合もあります。つまり「割高」ということです。
そうなると、先と同様に投資利回りが低くなるため、結局買い手を探すのに苦労する結果になります。投資の根底にある考え方は、「割安を買う」ことであり、単純に「良い会社を買う」ことではない点を、十分に理解しておく必要があります。
将来のEBITDAが年1億円見込める会社と、年2億円見込める会社なら、後者のほうが「良い会社」です。
しかし、前者が5億円で売却する(年利回り20%)と提示し、後者は20億円で売却する(同10%)と提示しているなら、前者のほうが割安であるため、どちらか1つを選ばなければならないとしたら、一般的には前者が選ばれるでしょう。
もちろん実際のM&A投資は、こんなに単純ではありませんが、要は買い手も経済的利益を追求してM&A投資をしているのだから、売り手が自己の利益の極大化だけを考えていては、売ることは難しくなるということです。
牧田 彰俊
株式会社すばる
代表取締役
【関連記事】
■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
■親が「総額3,000万円」を子・孫の口座にこっそり貯金…家族も知らないのに「税務署」には“バレる”ワケ【税理士が解説】
■恐ろしい…銀行が「100万円を定期預金しませんか」と言うワケ
■47都道府県「NHK受信料不払いランキング」東京・大阪・沖縄がワーストを爆走