(写真はイメージです/PIXTA)

M&AアドバイザリーサービスやM&A後の統合作業や組織再編、事業再生などのサービスを提供する株式会社すばる代表取締役の牧田彰俊氏が、M&Aで売却しやすい会社の特徴について解説していきます。

「時価総資産額」で会社を売れないケースとは

PEファンドの項目でも説明したとおり、M&Aの買い手は「投資」として会社を買います。これは、シナジーを求める事業会社でも原則的には同じです。そして投資のパフォーマンスは、投資から得られる収益額と投資額との割合で決まります。

 

中小企業でも、ある程度社歴の長い会社では、現在の収益性は低く毎年の利益額は少なくなっていても過去の蓄積により厚い内部留保(利益剰余金等)を抱えていることがあります。こういった会社は、M&A市場では売買が成立しにくくなります。

 

例えば、貸借対照表上の時価純資産額(時価総資産-負債時価)が20億円、毎年のEBITDAが2000万円という会社があるとします

※EBITDAとは、営業利益に減価償却費を足した利益概念

 

この会社の経営者がM&Aイグジットを考える場合、時価純資産額が20億円あるのだから、20億円を売値の目処としたいと思います。時価純資産額は解散価値に近しい概念でもあるので、この会社を買ってすぐに解散させても20億円の価値がある、つまり、買い手にとって20億円で買っても最悪でも損得なしで、あとは毎年の2000万円の利益が上乗せされていく、と考えられるためです。

 

しかし、買い手はそうは考えません。20億円という投資に対して年2000万円の収益であれば、年利回りはわずか1%です。大きな業務シナジーが見込めて、仮に利益が倍の4000万円に増えたとしても、利回り2%です。

 

または、20億円という投資に対して、年2000万円の収益では投資回収の期間は100年という言い方もできます。これでは投資としてはとても見合わないと考えることが普通です。

 

また、時価純資産額が会社の解散価値に近しいというのは、理屈の上では確かにそのとおりですが、会社を解散させることを目的としてM&Aするケースはほぼありません。また、実際に会社を解散するとなれば大変な手間と費用が掛かります。

 

取引先や職を失うことになる従業員にも迷惑がかかりますし、不動産の処分にも時間と費用が掛かるので、非現実的です。だからこそ、株式市場においても、PBR(株価純資産倍率)が1倍を割り込んでいる(株価が1株当たり純資産額よりも低い)会社がゴロゴロしているのです。

 

では、この会社をM&Aイグジットしたいときにどうすればいいかといえば、まず厚い純資産を投資に回して、収益性の高い事業を育てるか、高収益の事業をM&Aで買うなどすればいいのです。そうやって収益力を上げて、EBITDAを何倍にも増やしてからM&Aをすれば、ずっと高い価格で売れるはずです。

 

M&Aイグジットを考えるのであれば、まず収益力を上げる方法を考えるのが原則です。

 

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牧田 彰俊

幻冬舎MC

日本でも脚光を浴びつつある『連続起業家』という生き方。 150件を超えるM&Aのサポートをした著者が、連続起業家になるための失敗しない起業・会社売却の成功サイクルを解説する! 最近広く知られるようになってきた「連続…

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