南アフリカの通貨ランドは対ドルで過去1年ほど、概ね上昇傾向でした。資源国、高金利通貨といった要因がランドを支えてきました。ただ、足元新型コロナウイルスの感染再拡大(第3波)の影響などもあり軟調となっています。ランド安要因を整理して、今後の展開を占います。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報・ヘッドラインを転載したものです。

インデックスファンドより高いリターンを狙う!
「アクティブファンド特集」を見る

南アフリカ:新型コロナ感染第3波の拡大を受け厳格なロックダウンを実施

南アフリカのラマポーザ大統領は2021年6月27日、インドで初めて確認された新型コロナウイルスの変異株(デルタ株)による感染第3波の拡大を受け、新たなロックダウン(都市封鎖)措置を発表しました(図表1参照)。

 

日次、期間:2020年1月23日~2021年6月28日 出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表1]南アの新型コロナ新規感染者数の推移 日次、期間:2020年1月23日~2021年6月28日
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

第3波の中心は現在、最大都市ヨハネスブルグがあるハウテン州です。なお、今回発表されたロックダウン措置は感染拡大の初期以来最も厳しいレベルで、少なくとも2週間続く見通しです。例えば、屋内、屋外の集まりは葬儀以外すべて禁じられ、午後9時から午前4時までの外出、酒類の販売、ハウテン州への出入りも禁止となっています。

どこに注目すべきか:南アランド、資源国、感染拡大第3波、利上げ

南アフリカの通貨ランドは対ドルで過去1年ほど、概ね上昇傾向でした(図表2参照)。資源国、高金利通貨といった要因がランドを支えてきました。ただ、足元新型コロナウイルスの感染再拡大(第3波)の影響などもあり軟調となっています。ランド安要因を整理して、今後の展開を占います。

 

日次、期間:2020年6月29日~2021年6月28日 出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表2]南アの政策金利と通貨ランド(対ドル)レートの推移 日次、期間:2020年6月29日~2021年6月28日
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

まず、南アランドが過去上昇傾向だった要因から振り返ると、資源国であること、相対的高金利通貨であること、南ア政府の政策の安定性があげられます。また、新型コロナ感染拡大の第1波と第2波は比較的早期に収束しました。

 

これらの点を踏まえ、足元のランド安要因をあげると、資源価格の上昇の頭打ちが挙げられます。例えば自動車の排気ガスの浄化などに利用される白金の価格上昇と生産量の増加が南アランドの通貨の押し上げ要因でしたが、足元で白金価格は下落に転じています(図表3参照)。他の資源価格も上昇ペースの反動で下落が目立ちます。世界経済の回復傾向を受け、資源価格が本格的な下落に転じる可能性は低いと思われますが、注意は必要です。

 

日次、期間:2017年6月29日~2021年6月28日、生産量は月次、4月迄 出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表3]南アの白金の生産量(前年比)と白金市場価格 日次、期間:2017年6月29日~2021年6月28日、生産量は月次、4月迄
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

次に、新型コロナの感染拡大(第3波)に伴う厳格なロックダウン導入もランドの下押し要因と見られます。南アは過去2回の感染拡大局面は経済活動の制限により比較的早期に収束させています。しかし、今回気になるのは南アのワクチン接種率(少なくとも1回接種)が5%を下回り、極端に低いことです。世界保健機関(WHO)はアフリカ全体では接種率が1%程度と警告しています。同地域で全般的にワクチン接種が遅れていることが懸念されます。もっとも、WHOは南アにワクチン生産に関する技術移転の拠点を開設する方針を発表しており、今後の動向に注目しています。

 

ランド下落の恐らく最大の要因は6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で今後の金融引締めのトーンが強まったことです。米国金利上昇やドル高は通貨や新興国資産の下落材料となる傾向があります。大切なのは南ア中央銀行の金融政策でしょう。今のところ南アのインフレ率の落ち着きから、据置を維持していますが(図表1参照)、将来的な利上げを南ア中銀は示唆しています。資源国、高金利など、ランドの強みは維持されると思われますが、新型コロナの景気への影響を踏まえながらも、南ア中銀が想定通り対応するかに注目しています。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『南アランド、輝き続けるのか』を参照)。

 

(2021年6月29日)

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社

運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

日本経済の行方、米国株式市場、新NISA、オルタナティブ投資…
圧倒的知識で各専門家が解説!カメハメハ倶楽部の資産運用セミナー

 

カメハメハ倶楽部セミナー・イベント

 

【1/7開催】<令和7年度>
税制改正大綱を徹底解説
最新情報から見る資産運用への影響と対策

 

【1/8開催】オルカン、S&P500…
「新NISA」の最適な投資対象とは
金融資産1億円以上の方だからできる活用法

 

【1/9開催】2025年の幕開け、どうなる?日本株
長いデフレ環境を生き抜いたスパークスが考える
魅力的な企業への「長期集中投資」

 

【1/9開催】相続人の頭を悩ませ続ける
「共有名義不動産」の出口は“売却”だけじゃない!
問題点と最新の解決策を藤宮浩氏が特別解説

 

【1/12開催】相続税の
「税務調査」の実態と対処方法
―税務調査を録音することはできるか?
【見逃し配信special】

 

 

【ご注意】
●当レポートはピクテ投信投資顧問株式会社が作成したものであり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。当レポートに基づいて取られた投資行動の結果については、ピクテ投信投資顧問株式会社、幻冬舎グループは責任を負いません。
●当レポートに記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当レポートは信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当レポート中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資家保護基金の対象とはなりません。
●当レポートに掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録
会員向けセミナーの一覧