「相馬モデル」はワクチン接種の世界的リーダーとしても期待大 (※写真はイメージです/PIXTA)

日本のワクチン接種が遅れているなか、福島県相馬市が実施する「相馬モデル」が注目を集めています。ボストン在住の医師である筆者は、実際に相馬市の接種に参加して、感銘を受けたと語ります。なぜ、相馬モデルが成功しているのか? 相馬モデルには今後何が期待されるのか? 接種会場での体験に基づき、現役医師がレポートします。

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接種会場で目にした「相馬モデル」の成功

先日私は、福島県相馬市の「新型コロナウイルスワクチン接種メディカルセンター」で、ワクチン接種に参加しました。噂には聞いていましたが、まさに百聞は一見に如かず。「相馬モデル」の成功を目にして感銘を受けました。

 

2021年5月24日、「新型コロナウイルスワクチン接種メディカルセンター」が相馬市に設置されました。相馬モデルでは、行政が市内を10の地区に分け、希望する住民に日時を指定して接種券を送る「割当制」を採用しています。つまり、接種希望者は、ネットや電話の予約なしで、指定された日に接種会場に行くだけでよいのです。

 

地元テレビ局の情報によると、相馬市では、ワクチン接種対象の79%に当たるおよそ1万3500人が接種を希望し、7月17日までに終了する予定です。

 

接種会場でお会いした副市長さんや、市の職員や看護師さんたちとの会話したことで、(1)地域コミュニティ、(2)行政のリーダーシップ、(3)医師会や医療関係有識者との連携、これらの3つが「相馬モデル」の成功のカギだとわかりました。

 

※1 https://www.fnn.jp/articles/-/190426

 

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「スピーディなワクチン接種」を実現させた3つのカギ

(1)震災を乗り越えたコミュニティの絆

マスメディアやインターネットでは日々、ワクチンの副作用について情報が流れています。そのような状況で、多くの人が、ワクチン接種に対して過度な不安を抱えているように思います。

 

ところが、相馬市の人々にはそのような不安は見受けられませんでした。副市長さんによると、「相馬市のコミュニティでは、ワクチン接種を終えた人が、近所の仲間に『予想していたより何ともなかったよ』などと、経験談を共有しています。そのため、多くの市民は安心してワクチン接種を終えています」とのこと。やはり仲間のアドバイスは信頼できます。

 

私は、職員の方々といっしょに昼食をいただきました。皆さんが気さくだったので、すぐに会話が弾みました。食後は、地域の方から手作りの美味しい甘酒(ノンアルコールです)の差し入れまであり、あたたかい雰囲気に包まれました。

 

(2)行政の先見性

新型コロナウイルスワクチン接種メディカルセンター顧問を務める立谷市長は、すでに新型コロナウイルスのワクチンが、インフルエンザワクチンのように来年も必要になることを想定し、ワクチン接種の準備を進めてきました(※2)

 

当日、非常にスムーズに接種が進んでいたので、看護師さんに理由を尋ねたところ、「リーダーが作った会場のデザインが優れているからよ。すでに高校生も1回目の接種を終えているの」と教えてくれました。

 

さらに副市長さんは、「『割当制』の採用や、アクセスしやすいワクチン接種会場のデザインなど、地域性を生かした取り組みをしている」と説明してくださいました。

 

(3)プロの医療従事者による支援

医療ガバナンス研究所の上昌広先生のチームは、地元の医師会と連携し、震災以降、医療支援を続けてきました。

 

さらに、世界トップレベルの公衆衛生の専門家であり、キングス・カレッジ・ロンドン元教授の渋谷健司センター長は、科学的な視点に基づき、ワクチン接種や今後の長期的な感染症対策を検証しています。

 

それだけではなく、上先生のチームや渋谷先生は現場でワクチン接種に携わり、会場のスタッフと深い信頼関係を築いています。

 

※2 https://www.city.soma.fukushima.jp/kenko_fukushi/COVID19/vaccine/10168.html

 

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相馬市と「全米から心臓病を減少させた街」の共通点

私は、相馬市のワクチン接種に参加したとき、ふとフラミングハムを思い出しました。

 

フラミングハムは、ボストンにある私の自宅から車で20分ほどの距離にある、白人の中流階級が住んでいる米国によくあるタイプの街です。街の人口は6万8000人、面積は68.5平方kmほど。特にメジャーな産業はなく、ショッピングセンターや小売業が街の主なビジネスです。多くの住民は、ボストンやその周辺で働いているため、ボストンのベッドタウンとして知られています。

 

そのフラミングハムでは、1948年から「フラミングハム心臓研究」と呼ばれる世界的に有名な疫学研究が続いています。米国では、1940~50年代に心血管疾患が激増し、1950年までに全米の男性3人に1人が、60歳に達する前に心血管疾患を発症しました。そんなとき、米国政府、マサチューセッツ州とハーバード大学の共同で、予防的なアプローチで、大規模な心臓病の疫学研究がフラミングハムで開始されたのです。

 

フラミングハムは、長期疫学調査に適した街でした。その理由としては、主に以下のとおりです。

 

1)街のサイズや住民の生活が安定していること

2)街の医師や医療専門家が非常に協力的であること

3)住民リストがあり、保健局が死亡診断書の情報やその他の重要な統計を提供できること

4)30年近く前に、結核について住民参加によるコミュニティ研究を行い、成功した実績があること

5)住民に研究に対する協力精神があること

 

相馬市には、フラミングハムに似た状況があり、長期疫学調査に適していると思います。

 

フラミングハム心臓研究のおかげで、心血管疾患のリスク因子が明らかになり、米国では60年代半ばから心臓病が減り始めました。今後、相馬モデルが、ワクチン接種における世界的なリーダーになることを期待します。

 

※3 https://framinghamheartstudy.org/fhs-about/

 

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大西 睦子

内科医師、医学博士

星槎グループ医療・教育未来創生研究所 ボストン支部 研究員

 

 

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星槎グループ医療・教育未来創生研究所 ボストン支部 研究員 内科医師、医学博士

米国ボストン在住。東京女子医科大学卒業後、同血液内科入局。国立がんセンター、東京大学医学部付属病院血液・腫瘍内科にて造血幹細胞移植の臨床研究に従事。2007年より、ボストンのダナ・ファーバー癌研究所に留学し、ライフスタイルや食生活と病気の発生を疫学的に研究。08年から13年まで、ハーバード大学で、肥満や老化などに関する研究に従事。ハーバード大学学部長賞を2度授与。現在、星槎グループ医療・教育未来創生研究所ボストン支部の研究員。

【主な著書】
『カロリーゼロにだまされるな――本当は怖い人工甘味料の裏側』(ダイヤモンド社)
『「カロリーゼロ」はかえって太る!』(講談社+α新書)
『健康でいたければ「それ」は食べるな』(朝日新聞出版)

著者紹介

医療と社会の間に生じる諸問題をガバナンスという視点から研究し、その成果を社会に発信していく特定非営利活動法人「医療ガバナンス研究所」による学会。「官でない公」を体現する次世代の研究者の育成を目的とし、全国の医療従事者が会員として名を連ねている。

著者紹介

連載医療従事者が本音で語る「日本社会」の現状~GGO For Doctor

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