「自社の強み」を全く理解せず失敗した大塚家具の例
自社の価値の源泉となる強みが、一般的な業界他社の弱みになっているような企業は、M&Aでも非常に売りやすい会社となります。
例えば、私の知り合いが社長をやっている某介護会社では、SNSなどを活用した方法によって社員採用をしています。ご存じのように、介護業界はどこでも人手不足に悩んでおり、採用力や採用コストが成長のボトルネックになっているケースがよくあります。
しかし、この会社は、SNSを使った非常に優れた手法での採用マーケティングに成功しており、コストを抑えて継続的な人材採用を続けています。そして、実際に業績も右肩上がりで成長しています。もちろん成長の要素は採用ノウハウだけではありませんが、この採用ノウハウは他社が簡単に真似できるものではないため、価値を生む大きな強みとなります。
このような強みを明確にアピールできる会社は、M&Aにおいて、売りやすくなるのです。
逆に自社の価値の源泉を理解していなかったために経営に失敗してしまった最近の典型的な事例は、大塚家具でしょう。もともと、高級家具を丁寧な接客で時間を掛けて販売するビジネスモデルの中で、所有する満足度が高い高級家具を安定して仕入れることや、満足度の高い接客ノウハウをもつことが、同社の価値の源泉となる強みでした。
ところが、後継社長はその強みを捨てて、大衆的な品質と価格での家具販売という、まったく異なる市場ポジションに移行しようとしました。
市場ポジションを移行すること自体が一般的に悪いわけではありませんが、自社が築いてきた強みが活かせず、かつイケアやニトリなど、強力な競合がいる市場ポジションへ、明確な戦略なしに移行を図ったため、大失敗してしまったのです。
後継社長が自社の価値の源泉を理解していなかったのか、それとも理解はしていたけれど、感情的な問題から素直に認めることができなかったのかは、部外者にはうかがい知れません。しかし、このような失敗例は他山の石として、自社の経営に活かすべきでしょう。
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