変化する「お宝要素」…零細企業が高く売れるワケ
時流には、ビジネスとしての時流という点以外に、買い手企業が求める要素の時流という点もあります。
例えば、日本で最初のWebサイト売買プラットフォームができたのが、2005年頃ですが、当初はそれほど活発に取引されていたわけではありません。サイト売買がかなり活発になって一般化したのは、2014~2015年頃になってからです。
そのとき、普通の個人が趣味で作っていた情報サイトなどが、高値で売れるということが起こるようになったのです。
Webサイトをビジネスで活用しようとする際に、自社でゼロからWebサイトを起ち上げてコンテンツを作り込んでいくより、既存のWebサイトを買ったほうが早いし、検索エンジンの評価も高くなりやすいということに、多くの企業が気づき始めたためです。
そこで、売るために作っていたわけではない趣味のWebサイトが、時流の変化でたまたま「お宝化」して高額で売却できたという人がたくさん出てきました。
グルメ情報に特化したメディアサイト「めしレポ」やサイト売買プラットフォーム「UREBA」を立ち上げ、事業譲渡した海山龍明氏も、最初はアプリ開発の目的で作っていたWebサイトのコンテンツにたまたま人気が出て、それをブラッシュアップすることでイグジットできたケースで、なかば偶然です。
別の例ですと、電気工事や設備工事の会社には、古い歴史をもつ零細企業がたくさんあります。以前なら、そういう会社がM&Aで売れることは考えにくかったでしょう。ところが、最近は電気工事作業者が不足しているため、大手企業が人材を確保する目的で中小の電気工事会社を買収する例が増えています。
高度成長期以来、国内では新しい建物や設備をどんどん建て続けてきたわけですが、現在はそれが次々と老朽化しており、保守や改修の必要性が増えているためです。いくらITやAIが発達しても工事作業には一定の人手がどうしても必要ですし、電気工事は有資格者しか行うことができないので、だれでもできるというわけにもいきません。
そのため、昔なら(M&A的な視点から見て)高い価値があるとは思われなかった「工事作業者」が、高齢化・人材不足という時流の中で「お宝化」しているのです。こういう例は、他の業界でもよく見られます。
しかし、そういう会社の経営者は、そういった要素があることが当たり前だと思っているので、「強み」として認識できないということが往々にしてあります。
M&Aイグジットを考えるのであればもちろんのこと、そうではなくても、自社の価値の源泉がどこにあり、業界内での競争優位性がどこにあるのかといった点を一度社内で徹底的に考えて、棚卸しをしておくことが、その後の経営のためにも非常に有効です。
ただし、自社内の視点だけだと難しいこともあるので、そう感じたときは、M&Aの仲介会社など、外部の目を交えることでより客観的かつ明確に自社の特徴を見いだすことができるでしょう。こうした経営「棚卸」の活動を通じて、思いもしなかった「お宝要素」が見つかることもよくあるのです。
牧田 彰俊
株式会社すばる
代表取締役
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