家賃滞納で「退去になるとき」「ならないとき」の違いは?【弁護士が<落語で>解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

ここでは落語の噺をもとに、不動産賃貸借を学びます。落語『長屋の花見』の家主は、住人たちを追い出すため、賃料滞納や建物損壊を理由として賃貸借契約を解除できるのでしょうか。また、解除が認められた場合において、住人たちが退去しないときに、退去させるにはどのような方法をとればよいのでしょうか。なお、説明をわかりやすくするため、家主は、ただの管理者ではなく所有者であることを前提とします。※本連載は、弁護士・森章太氏の著書『落語でわかる「民法」入門』(日本実業出版社)より一部を抜粋・再編集したものです。

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新型コロナで「家賃を払えない住人」が増加中

【おわりに】

新型コロナウイルスの感染拡大による減収を理由とする賃料未払事例が生じています。どのような場合に不動産賃貸借契約の解除が認められ、解除後も居座る賃借人がいた場合にどのように直接強制が行われるかは役立つ知識です。

 

<まとめ>

●不動産賃貸借契約の場合、義務違反(債務不履行)があったときでも、いまだ信頼関係を破壊するに至らなければ、賃貸人が解除権を行使することは信義則上認められない。

建造を損壊するとどうなる?不動産賃貸借のコラム

【法定更新と立退料】

建物賃借人は、民法の特別法である借地借家法により保護されています。

 

建物賃貸借の期間満了の1年前から6ヵ月前までの間に、更新をしない旨の通知をしなかったときは、契約更新とみなされます。

 

また、賃貸人からする更新拒絶の通知には、賃貸人が建物の使用を必要とする事情など正当事由が必要です。賃借人に立退料を支払うことは、正当事由を補完する役割を果たします。

 

賃貸借期間が満了するので退去してほしいと家主からいわれたら、必ず退去しなければならないのではなく、家主に正当事由がなければ更新拒絶は認められません。仮に更新拒絶が認められる場合であっても、立退料を受け取ることができることが多いです。

 

【サブリース】

サブリースとは、不動産所有者と賃貸・管理業者とが賃貸借契約を締結し、さらにその業者と入居者が転貸借契約を締結する取引です。所有者と入居者が契約を直接締結するのではなく、間に業者が入るいわゆる又貸しです。平成27年の相続税法改正(基礎控除の4割減額)に伴い、相続税対策として借金してアパートを建てる人が増え、その際にサブリースが利用されました。また、不正融資が問題となったシェアハウス投資でもサブリースが利用されました。

 

所有者がサブリースを選択するメリットとして、賃料を保証してもらえるので収益が安定することがよく挙げられます。

 

しかしながら、賃料保証期間終了後に空室が多いと、賃料を引き下げられることがあります。保証期間が10年であれば、相続税法改正前後に建てられた物件の保証期間は令和5年頃に終了しますので、今後、賃料が減額される物件が多数出ることが予想されます。また、賃料保証期間中であっても、賃料が減額されることがあります。

 

【刑法の建造物損壊罪と器物損壊罪】

『長屋の花見』の住人は、ご飯を炊く火の薪にするために借家の雨戸と天井板を剥がしてしまいます。このことは、賃貸借契約の解除事由になるだけでなく、天井板について建造物損壊罪、(容易に取り外し可能な)雨戸について器物損壊罪が成立します。

 

両罪の損壊は物理的損壊に限られず、効用の滅失も含みます。公園の公衆便所の外壁にスプレーで落書きした行為を損壊にあたるとした判例があり、正体不明の路上芸術家であるバンクシーのように、他人の建造物や物にスプレーで絵を描くと損壊に該当することがあります。

 

法定刑は、建造物損壊罪が5年以下の懲役であるのに対し、器物損壊罪は3年以下の懲役または30万円以下の罰金などです。また、建造物損壊罪が非親告罪(被害者などの告訴がなくても起訴できる犯罪)であるのに対し、器物損壊罪は親告罪であり、被害者などの告訴がなければ起訴されません。

 

 

森 章太

東京中央総合法律事務所 弁護士

東京中央総合法律事務所 弁護士

1981年生まれ。横浜市立大学商学部経済学科卒業。税理士法人勤務、税理士試験合格。慶應義塾大学大学院法務研究科卒業。司法試験合格後、弁護士登録。

横浜市立大学での市民向け講座の講師並びに税理士団体及び企業での研修講師を務めている。これまでの講座内容として、「落語で学ぶ民法・刑法」、「映画『男はつらいよ』で学ぶ法律講座」、「平成史で学ぶ法律講座」、「平成の小説で学ぶ法律講座」、「『カラマーゾフの兄弟』で学ぶ法律講座」などがある。

著者紹介

連載落語でわかる「民法」入門

落語でわかる「民法」入門

落語でわかる「民法」入門

森 章太

日本実業出版社

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