新吉は、取引先の女房と…落語で「不貞行為」を解説
『紙入れ』
(麻生芳伸 編『落語百選 夏』〔筑摩書房、平成11年〕316〜322頁 参照)
新吉は、出入り先の旦那の女房と差しむかいで座っている。女房が旦那は今夜帰らないから大丈夫、泊まっていきなという。新吉が旦那に知れたら申し訳ないとためらっていると、旦那に厄介になったから私はどうでもいいのか、旦那の行動はすべて私の差し金であると女房がいう。女房が新吉の手をとると、表の戸が叩かれ、旦那の声がしたので、新吉は裏口から逃げる。
新吉は、慌てていたため、女房からの手紙が入った紙入れを旦那の家に置き忘れた。紙入れは旦那から貰ったものであった。夜逃げも考えたが、旦那が紙入れに気づかなかった可能性もあるので、翌日に様子を見に行くことにする。
新吉は、翌日の早朝、旦那の家を訪れる。そして、目をかけてくれている、ある旦那の女房と世間に顔むけのできないことをしてしまい、しかもその女房の手紙を入れた紙入れを置き忘れてしまったので、ほとぼりの冷めるまで旅に行くと伝える。
旦那の女房が「ふふふふ、いやだよ、新さん…ほんとうに、青い顔なんかしてさ。しっかりおしよ。そりゃ、おまえ、旦那の留守に、若い男でも引き入れて、内緒事でもしようというおかみさんじゃないか、おまえ、そこに抜け目があるもんかね、紙入れなんか、ちゃあんと…こっちへしまって…ありまさあ、ねえ、そうでしょ、旦那?」という。
旦那が「うん、そうとも。たとえ紙入れがそのへんにあったって、自分の女房をとられるようなやつだから、そこまでは気がつくめえ」。
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