居住者間のトラブルは「生活音」が最多
【おわりに】
国土交通省の「平成30年度マンション総合調査結果」によると、居住者間の行為・マナーをめぐるトラブルとして、「生活音」が38.0%と最も多く、次いで「違法駐車・違法駐輪」が28.1%、「ペット飼育」が18.1%となっており、生活音に関するトラブルが多いです。
新型コロナウイルスの感染防止のため自宅にいる時間が長くなっているため、生活騒音トラブルが増加しているといわれています。また、今後、異文化や異なる生活習慣を有する人が増えれば、トラブルが増加する可能性があります。
<まとめ>
●借地借家法の規定に反する特約で賃借人に不利なものは無効である。
●建物の引渡しを受けていれば、引渡し後の新所有者に対して建物賃借権を主張することができる。
●建物に抵当権設定登記がなされた後に賃借して入居した場合、抵当権に基づく競売による売却により建物賃借権は消滅する。
●受忍限度を超える生活騒音に対しては、不法行為による損害賠償請求権に基づき慰謝料を請求することができる。また、人格権に基づき生活騒音行為の差止めを請求することもできる。
コラム:抵当権と質権の違い、騒音で傷害罪となった例
【抵当権と質権】
抵当権と質権の共通点は、債権関係から当然に発生するのではなく、当事者の合意により設定される担保物権であることです。
一方、両者の大きな相違点は、担保物の占有移転の有無です。抵当権の場合、占有移転がないため、抵当権設定者は引き続き担保物を利用することができます。占有移転がないため外観上は設定の有無がわかりませんが、抵当権には登記制度があり、抵当権設定の有無及び内容は不動産登記簿謄本を確認することにより知ることができます。
質権の場合、質権者に質物(担保物)の占有が移転します。そのため、質物を利用できなくなり早く取り返したい設定者に弁済を促す効果はありますが、「大工が労働手段である道具を質物にしてしまう」ような場合支障が出るため、質物にふさわしい財産が限られるという欠点があります。
【隣人騒音と傷害罪】
政五郎らが伊勢屋の妾への嫌がらせとして故意に騒音を起こした場合、刑法の傷害罪により処罰されることがあります。
最高裁平成17年3月29日決定・裁判所Webは、「自宅の中で隣家に最も近い位置にある台所の隣家に面した窓の一部を開け、窓際及びその付近にラジオ及び複数の目覚まし時計を置き、約1年半の間にわたり、隣家の被害者らに向けて、精神的ストレスによる障害を生じさせるかもしれないことを認識しながら、連日朝から深夜ないし翌未明まで、上記ラジオの音声及び目覚まし時計のアラーム音を大音量で鳴らし続けるなどして、同人に精神的ストレスを与え、よって、同人に全治不詳の慢性頭痛症、睡眠障害、耳鳴り症の傷害を負わせた」ことは傷害罪に該当するとしました。
この事件での音量の最大値は、地下鉄や電車の車内の騒音に匹敵すると認定されています。なお、被告人は実刑になりました。
森 章太
東京中央総合法律事務所 弁護士
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