新型コロナウイルスの抑制にいち早く効果を上げていたベトナムですが、ここへきて感染拡大の傾向が見えてきました。国を挙げて対策に乗り出しているものの、第4波は手ごわく、ベトナム経済への影響が懸念されます。今年に入ってから堅調だった不動産市場はどうなるのでしょうか。南部ホーチミンを拠点とし、不動産ビジネスを展開する徳嶺勝信氏が現状と今後の見通しについて解説します。

5月までの市場は、昨年同時期より安定していたが…

多くの不動産の専門家や関連業者は、2021年の期初5ヵ月間の不動産市場について、2020年の同時期よりも安定的に推移しているとしています。その理由は、昨年の政府の新型コロナ流行感染制御の手腕と経験値の評価です。それにより、不動産物件は昨年よりも多く市場に出回りました。とくに土地、マンション、タウンハウスなどが急増し、リゾート物件も回復してきました。

 

過去5ヵ月間のホーチミン市および近隣の省における供給と消費について、ベトナムの不動産コンサルティング会社「DKRA Vietnam」が出した統計によると、土地区画販売に関しては、3,761区画を持つ23のプロジェクトが供給されており、そのうち、約2,836区画が販売に至りました。これは2020年の同時期(5,684区画)の66%に匹敵します。ただしホーチミン市場では、新たな供給は記録されていません。

 

昨年末からの動きの主流は土地です。土地に関してはホーチミン市郊外の土地が活発であり、とくに郡から区に繰り上がるニャーベー、ホックモン、ビンチャン、クチ、カンゾーなどは昨年末から4月までに3%から20%上昇しました。

 

マンション投資の流れは、コロナ以前よりホーチミン市では減少傾向にありました。法的な問題も踏まえ、新規供給物件が減少したこと、そして、新規プロジェクトの価格高騰により、投資物件として気軽に購入できない価格にまで達していたことがあります。

 

そのため、ホーチミン市周辺地域に移行する流れが起こり、ビンズー省、ドンナイ省、ロンアン省などで新規プロジェクトが立ち上がり、活発化しました。

 

同じくDKRA Vietnamによる最新レポートでは、ホーチミン市で5月に売りに出された低層住宅プロジェクトは3つだけで、前月から26%減少し、販売数も前月と比較して50%近く減少しました。さらに二次販売市場でも動きが少なく、主に法的に問題なく引き渡されたプロジェクト、または前月と比べて価格が変わらない、引渡し前段階にあるプロジェクトに集中しています。

資金は株式市場に流れるも、いずれ不動産に戻る見込み

5月に入ってから新規供給数や販売数が減少している理由は、新型コロナの第4波の感染拡大の影響により、不動産購入に対して慎重になっていると同時に、ほとんどの新規プロジェクトは、すでに販売済みの近隣のプロジェクト価格に比べて価格が上昇していことにあります。さらに投資目的で購入する顧客が多く、実際に住宅として購入する割合は少ない状況です。

 

コロナウイルスの第2波、第3波でもこの傾向は出ていたため、さほど驚くには値しませんが、多くの不動産関係者が懸念しているのは、現在、第4波が4週間以上続いているという点です。これほど長くなれば、銀行融資の返済にも関係してくるため、多くの個人投資家は市場の流動性を悲観し、損失削減の方向へと傾いています。借り入れ金利は低いものの、このような不安定な状況下において、不動産市場が冷え込むのが心配です。

 

コロナ禍の感染拡大をうまく抑制してきたベトナムですが、それによりワクチン確保が遅れています。今後も第5波、第6波と感染が拡大する可能性も否定できず、不動産市場も先が読めない不透明な状況です。

 

現在の市場における資金の流れを見ると、これまで不動産市場に流れていた資金が株式市場に流れています。6月に入ってからは株の取引高が急激に増え、システム障害が起きました。しかし、ベトナムではこれまでも、株式市場で動きが出たあとに不動産市場へと流れるのがパターンなので、コロナ禍の落ち着きを確認しながら、再び不動産市場へと資金が戻る動きを見据えています。不動産開発会社も状況を読みつつ、プロジェクト投入時期を探っています。

 

ベトナムでの不動産投資を検討している方は、ベトナム人の動向を常に注視してください。それがベトナムで不動産投資を成功させる秘訣です。

 

 

徳嶺 勝信
VINACOMPASS Co., Ltd.
General Director

 

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