国税庁は国際的な租税回避を阻止するため、海外資産の情報収集および税務調査体制を整備しています。また国際戦略の一環として、2017年から全国の国税局に設置された部署が富裕層PT(プロジェクトチーム)です。今回は国税組織の国際課税への取り組みと、富裕層PTの設置による相続税調査の影響について説明していきます。

富裕層PTの調査内容と税務署の税務調査との違い

税務調査は税務署や国税局職員が行いますが、実地調査をする前に情報収集を行います。富裕層PTは富裕層の情報収集と対象者の調査の必要性を検討する作業を業務とし、人員は国際課税に精通し、豊富な調査経験を有する統括国税実査官を中心に構成されています。

 

■税務署では税金の種類ごとに税務調査を実施する

税務署が税務調査を実施する場合、税金ごとに担当部門が区分けされています。相続税を担当するのは資産課税部門ですが、資産課税部門が法人税の調査をすることはありません。

 

複数の税金を調査する場合には各担当部署が連携し、それぞれの部署が担当税目の調査を実施します。

 

■富裕層PTは超富裕層に関係する情報を税金の種類に関係なく収集する

従来の国税組織は税金ごとに情報を管理していたため、納税者に関係する情報を一体的に集めていませんでした。

 

しかし、富裕層 PTは調査対象者はもとより、対象者の関係者や主宰(関連)法人を管理対象者グループとして一括管理します。

 

そのため、グループ内の情報を富裕層PT内で分析・検討でき、租税回避の状況や課税漏れを全体で把握することが可能です。

 

■富裕層PTが実地調査が必要と判断した場合は国税局全体で調査を実施する

税務署の調査でも複数の税金を同時調査することはありますが、基本的には税金の種類ごとに調査をします。

 

一方、富裕層PTは調査対象者の関係する税金を総合的に分析・検討するため、実地調査を行うと判断した場合には、必要に応じて複数の調査担当部署が連携して調査体制を編成し調査が実施されます。

相続税の申告を適正に行わないと高確率で調査を受ける

相続税は亡くなった人の全ての財産を申告するため、富裕層PTは申告漏れとなっている財産がないか、集めた資料を基に念入りに分析・検討します。また、税務署が担当する相続税の申告書においても、申告漏れ財産の確認は最優先で実施されているため、適正に申告手続きを行わないと税務調査を受けることになります。

 

特に富裕層の方においては、相続税の申告書作成を税理士に依頼する際は相続税専門の税理士事務所に依頼することを推奨します。

 

相続税は税金の中でも特に専門性が高い税金であり、申告書を作成した税理士によって税務署から調査を受ける確率が変わるからです。相続財産が多い富裕層の場合、課される税率が高くなりますが、相続税専門の税理士に依頼することによって税額が大きく下がることもあります。

 

 

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本連載は、税理士法人チェスターが運営する「税理士が教える相続税の知識」内の記事を転載・再編集したものです。

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