「実は発行済です」…裁判所での「ちゃぶ台返し」
3.本Caseの検討
最高裁は、無効説を採用することを明言したが、学説でいうところの無効説とは必ずしも同一の立場ではないようである。そこで本Caseに即し、裁判所の意図するところを考えてみたい。
判示からは、裁判所が、「差止請求権の実効性」を強く強調していることが分かる。このことを意識して、本Caseを見てみると、本Caseにおいて、Yは、裁判所の仮処分命令に反して新株発行を敢行したのみならず、そのことを、約1年後の第一審第8回口頭弁論期日まで隠している。
つまり遡る7回の期日において、Yは、(新株が発行されているにもかかわらず)「新株が発行されていない」ことを前提とした主張・立証を行っているのである。
しかも審理の最終局面にあたって、「実は発行しておりました」と「ちゃぶ台返し」をしている。このように、差止制度を無視するYの不誠実な訴訟遂行態度が、裁判所の心証に悪影響を与えていることが分かる。結論としては、前掲最判平成5年12月16日における無効説は、一種の裁判所侮辱的な発想を背景にしているものと理解できよう。
松嶋 隆弘
日本大学教授
弁護士
2025年2月8日(土)開催!1日限りのリアルイベント
「THE GOLD ONLINE フェス 2025 @東京国際フォーラム」
来場登録受付中>>
【関連記事】
■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
■月22万円もらえるはずが…65歳・元会社員夫婦「年金ルール」知らず、想定外の年金減額「何かの間違いでは?」
■「もはや無法地帯」2億円・港区の超高級タワマンで起きている異変…世帯年収2000万円の男性が〈豊洲タワマンからの転居〉を大後悔するワケ
■「NISAで1,300万円消えた…。」銀行員のアドバイスで、退職金運用を始めた“年金25万円の60代夫婦”…年金に上乗せでゆとりの老後のはずが、一転、破産危機【FPが解説】
■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】